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高齢者の孤独を、コルブの経験学習モデルで解消する

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コルブの経験学習モデル

様々な経験を通して、人間が成長するということは、誰もが実感をともなって理解していることでしょう。しかし、似たような経験をしても、そこから多くを学んで変化できる人と、そうでない人もいます。これはどうしてなのでしょう。

この疑問に答えるには、デービッド・コルブの「経験学習モデル」を知る必要があります。このモデルは、人間が経験から学ぶときは、4つのステップを経ていることを示したものです。それは(1)経験(2)内省/振り返り(3)教訓化(4)試してみる、というものです。

まず、人間は生きている限り、経験をします。しかし、そうした経験を振り返り、何が良かったのか、何が悪かったのかを内省するという段階で、それを行う人と行わない人に分かれます。ここで脱落してしまうと、せっかく経験したことが、次に活かせなくなります。

さらに、そうして内省から「こういう時は、こうする」という教訓を引き出す段階では、知識や思考力が必要になります。この段階で、上司や同僚などからアドバイスをもらえる環境にある人は、ラッキーでしょう。また、本を読む習慣があれば、当然、有利になります。

そして最後は、ここまでのステップから得られた教訓を、本当に実行できるかということです。新しいやり方を試してみるという段階なのですが、リスクを極端に嫌う人は、この段階で脱落することもあるでしょう。

こうした4つのステップを全てクリアすると、人は変わります。特に、試してみた結果として得られるのは新たな経験なので、4つのステップをクリアしていくことに慣れている人は、どんどん成長します。しかし逆に、どこかで詰まってしまう人は、成長が止まるという恐ろしさもあるわけです。

高齢者ならではの困難はどこにあるのか

高齢者が抱えやすい問題として注目されているのは、孤独です。現役を引退し、それまでの人間関係が維持できなくなるということは、誰にでも起こります。孤独を経験するというところは、高齢者に共通するところでしょう。

まず、孤独であることを、自らのあり方を変えることで、解消しようと思うかどうかで、バリアがあります。孤独で寂しいということを認めることは「弱いこと」だと感じてしまえば、それを認めない人も出るでしょう。また「弱いこと」を「悪いこと」としてしまえば、なおさらです。

とはいえ、孤独は人間にとって辛すぎる経験です。そもそも本能が、それを拒否するようになっています。時間がたてば、それをなんとかしたいと望む高齢者も増えるでしょう。その次のステップである「なぜ、自分は孤独になってしまっているのだろう」と内省することができれば、救いがあります。

この内省は「これまでの自分のやり方」を変える方向に向かいます。例えば「挨拶くらいしかしなかったご近所と、世間話をしてみよう」という具合です。それで上手く行かなければ、他の方法を試すということもできる可能性も高まります(失敗しすぎると萎縮してしまうこともありますが)。

問題は、こうした内省のステップで「自分が孤独なのは、社会のせいだ」という具合に、他責に向かってしまう場合です。自分のあり方の方にも問題があることを疑えないと、有効な内省にならないのです。

しかし高齢者であるということは、とにかく、その年齢までは、しっかりと生きることができたことを意味するでしょう。それだけ長い年月、自分を生かしてきたのは、自分の価値観です。その価値観を疑うということは、特に、高齢者にとっては難しいことなのは、当然です。

個人でやれる優れた内省の方法がある

理想的には、優れたコーチをつけて、内省のステップを超える手助けをしてもらうことです。しかしこれは、一般的な方法とはいえません。内省のステップを、個人では上手に超えられない場合、一つ、良い方法があります。それは「書くこと」です。

優れたコーチが行うのは、対話です。そして「書くこと」には、自分自身との対話という側面があります。「なんだか、周囲のみんなが、自分から離れていく」「自分は、孤独に耐えられると信じてきたけれど、寂しいのは苦しい」といったことを、自分で書いて、自分で読むわけです。

「苦しいのは嫌なので、周囲のみんなが、自分から離れないようにしたい」「でも、愛想笑いなど、自分にはできない」「愛想笑い以外に、周囲のみんなとつながる方法はないのだろうか」「◯◯さんも、自分と同じくらい頑固なのに、周囲と上手くやっている」「なぜだろう」

もちろん、誰の助けも得ないまま内省するので、このようにストレートには進みません。しかし「書くこと」は、自分を明確にする作業であることは、古くから知られている人間の知恵です。

現代であれば、匿名のブログなどが、こうした内省には適していると思います。日記も、もちろん有効です。ブログや日記が苦手なら、短歌や俳句でも十分に内省の機能を果たすと考えられます。誰かに手紙を書くこと(実際に出さなくてもいい)も有効です。

人材育成の世界では、将来の自分自身に対して手紙を書くという「自分への手紙」という手法が用いられることがあります。例えば、3ヶ月後の自分に手紙を書いてもらい、他の誰も読めないように封をして、それを介護職などに預けて、3ヶ月後に返却してもらうといったことも有効かもしれません。

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