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認知症に苦しむ人が1,000万人を超える社会がやってくる

認知症に苦しむ人が1,000万人を超える社会がやってくる

厚労省の推計でも1,100万人に(2025年)

厚労省の推計では、2025年には、認知症に苦しむ65歳以上の人は、700万人にもなります。認知症の一歩手前の状態である軽度認知障害(MCI: mild cognitive impairment)」に苦しむ人とされる400万人と合わせれば、この数字は1,100万人になります。

日本人の10人に1人が認知症ということになるわけですが、そうした人々のために使われる医療費や介護費は、どう考えても足りません。こうした国の社会保障のための財源不足は、今現在でもすでに、介護業界のひどい待遇と、それによる人材不足を招いています。

多くの認知症に苦しむ人は、介護の専門家による十分なサポートが得られなくなります。そうなれば、介護は、家族で行うという状態が一般化せざるを得ないでしょう。しかし、介護は誰にでもできる仕事ではありません。専門家の支援なく、素人が認知症の人の介護をするのは、本当に厳しいものです。

その介護は10年以上続くという覚悟が必要

介護を必要とせずに生きられる限界を特に健康寿命と言います。最新のデータ(2016年)は、この健康寿命を、男性で約72歳、女性で約75歳であったことを示しています。

この健康寿命を、平均寿命から引き算すれば、介護の期間がだいたいわかります。平均寿命は、男性で約81歳、女性で約87歳です。引き算の結果から推定される介護の期間は、男性で約9年、女性で約12年ということになります。

ただ、平均寿命の計算には、若くして亡くなってしまう人も含まれていることから、本当は、平均余命で考える必要があります。65歳になった人の平均余命は、男性で約19年(推定寿命84歳)、女性で24年(推定寿命89歳)です。すると介護の期間は、男性で約12年、女性で約14年になります。

どうして本気にならないのか

1,000万人を超える認知症の人が、その数を増やしながら、それぞれに10年以上の期間に渡って顕在化するのです。専門家による支援は、全く足りなくなります。自分の親や家族が認知症になったら、誰も助けてくれない可能性が高いのです。

自動車の運転で死亡事故起こす高齢者のうち、約半数は、認知症の人であることがわかっています。1,000万人のうち、実際はかなりの人が、運転をしています。自分の親や家族が、死亡事故を起こしてしまった場合の賠償金などについても、大きなリスクになって行きます。

残されている道は、日本全体の生産性を徹底的に高め、政府の歳出を徹底的に削減し、介護職の待遇を大幅に改善し、介護業界の人材不足を解消することです。これを本気で進めないと、本当に、本当に、ひどいことになります。

※参考文献
・毎日新聞, 『高齢運転者 認知症の恐れ5万4000人』, 2018年2月15日

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