閉じる

中国の介護需要は、大きなチャンスになるか?

中国の介護需要は、大きなチャンスになるか?

中国の高齢者人口について

2016年末の中国において、60歳以上の高齢者は2.3億人います。65歳以上の高齢者は1.5億人です。2030年には、60歳以上の高齢者は、中国全人口の25%にもなるそうです。14億人の25%ですから、3.5億人です。

論文によれば、そんな中国で、介護を必要としている高齢者は4,000万人にもなります。これは、介護職の需要に換算して1,000万人とされています(田, 王, 2019年)。しかし、中国において介護職としての資格を持っているのは、わずか30万人とのことです。

中国では、少しでも儲かるとわかったビジネスは、すぐにコピーされ、そのビジネスは飽和状態になることが知られています。そうした中国で、介護職の需要に対して供給が極端に少ないということは、中国においても、介護は儲からないということなのでしょう。

中国における介護ビジネスが困難な理由

中国は、ここ数十年で、日本が経験した以上の速度で、急速に経済発展しました。その発展は、一人っ子政策と共に進みました。結果として、1人の現役世代に、2人の両親と4人の祖父母が乗っかっています。

中国の経済発展は、物価の急激な上昇を生んでいます。しかし両親は、そうした急速な発展を乗り越えられるよう、子供の教育にお金をかけており、貯蓄が少ない状況になっています。貯蓄があっても、物価の上昇により目減りしていることも普通です。

そんな背景から、中国の高齢者は、お金を持っていないのです。子供は、少なからぬケースで、日本よりも高い賃金で働いていたりもしますが、祖父母まで入れて6人もの高齢者を支えるのは、事実上不可能です。そんな事情から、中国では、子や孫に見捨てられた高齢者の自殺が問題になっています。

とはいえ無視できない巨大な市場

中国において、介護ビジネスがなかなか成長しない背景には、お金を持っていない高齢者に対して、介護職に対して現代の高い賃金を支払いながらのビジネスは成立しないという現実があるのです。

しかし、これは介護の生産性が高まるにつれて、また、中国の経済が成長するにつれて、徐々にではあっても、介護で儲かるエリアが広がっていくはずです。少しでも儲かるエリアが出てくれば、その向こう側には、巨大な市場が待っています。

日本でも、介護の生産性は問題になっており、介護業界の低賃金の原因のひとつになっています。これを受けて、IoTなどの力で、介護の生産性を高めようというチャレンジは増えてきています。こうしたチャレンジに成功した企業は、日本のみならず、中国でも大きな成功をおさめるはずです。

※参考文献
・田 栄富, 王 橋, 『日本における介護サービス業の現状と労働生産性』, 経済社会研究 = The journal of the Society for Studies on Economies and Societies 59(3), 25-44, 2019-01-25
・チャイナネット, 『高齢化をめぐる中日の8つの共通点 日本の今日は中国の明日か』, 2018年2月4日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由