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【東日本大震災から8年】震災と被災地の高齢者

女川駅(女川駅 / KAIGO LABスタッフ撮影;2018年6月)

東日本大震災から8年

今日で、あの東日本大震災からちょうど8年が経ちます。誰もが、それぞれの立場で被災地の支援を行ってきたと思いますが、3月11日の前後以外では、被災地のニュースを見ることも減ってきました。

少なくとも、東日本大震災の被災地は「依然として復興に苦しんでいる」という認識は広く伝わっていると思います。同時に、現地からは「いつまでも被災地ではない」という声も聞こえるようになっており、わかりやすい支援の形は、以前よりも見えにくくなっています。

東日本大震災に限らず、災害の被災地における復興は、まだらに進みます。急速に災害前の状態に戻れる人もいれば、災害から何十年も経っても、その影響が色濃く抜けきれない人もいます。この後者の状態に苦しむ人には、引き続き、支援が必要になります。

東日本大震災の被災地における高齢者は?

では、高齢者という視点から、東日本大震災後8年の被災地は、どのような状況にあるのでしょう。津波に自宅を流されてしまった人々の、復興住宅への移住は、それなりに進んでいるようです。こうして復興住宅に移住している人の約半数は高齢者です。時事ドットコムニュースの記事(2019年3月7日)は、次のように報じています。

岩手、宮城、福島3県の復興住宅は、計画の約3万戸がほぼ完成し、国土交通省のまとめでは昨年11月時点で約2万6800戸が入居済み。高齢者の1人暮らしが多い点が共通し、岩手は昨年末時点で県営1322戸のうち65歳以上の入居者が55%を占め、その半数以上が単身。宮城も同4月時点で65歳以上が4割を超え、うち3分の1が単身だ。福島県で東京電力福島第1原発事故の避難者が入居する復興住宅もほぼ同じ割合で、誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」は大きな問題となっている。

日々の生活における買い物はどうなっているのでしょう。商店街の多くを津波で流されてしまった地域には、コンビニが進出しており、コンビニが生活の基盤になっているようです。慣れ親しんだ商店街が戻らないのは残念ですが、それでも、新しい暮らしが始まっています。読売新聞の記事(2019年3月6日)は、次のように報じています。

岩手、宮城両県の沿岸部のコンビニ店舗数について、市町村ごとの統計をとっているセブン―イレブン、ローソン、ミニストップに取材したところ、震災直前(11年2月末)は23市町に計471店だった。今年1月末は24市町に計635店と、1・3倍以上に増えた。3社とも復興工事の作業員や、集団移転先の住民らによる需要増加を見込んだ。

では、介護される高齢者はどういう状況なのでしょう。入居する介護施設が地元にないというケースも出てきているようです。もちろん、在宅介護であれば地元に暮らし続けることもできますが、介護施設に入居するしかない高齢者もいるわけで、ここは非常に厳しいと考えた方がよさそうです。朝日新聞の記事(2019年3月2日)は、次のように報じています。

東日本大震災の被災地で介護施設が見つからないお年寄りを、青森県弘前市の高齢者福祉施設が受け入れ続けている。8年間で延べ170人。古里に帰れぬままの人も多く、35人が異郷で亡くなった。震災のひずみが行き場のないお年寄りを今も生んでいる。

ハード面でのインフラは整いつつあるが・・・

介護施設の不足など、大きな問題も残りますが、復興住宅の整備も含めて、ハード面でのインフラは「とりあえず暮らしていく」というレベルでは、整いつつあるのかもしれません。ただ、地域コミュニティーといったソフト面でのインフラの復興は、まだ大きな課題として残されています。

代々で人間関係をつなぎ、地域コミュニティーを構築してきた地域が、津波で流されたりしたのです。そこから仮設住宅に移住するだけでも、かつての地域コミュニティーは相当失われます。そこに今、さらに復興住宅への移住ということが起こっているのです。

地域コミュニティーを再構築するようなNPOは、震災直後には多くありました。しかし震災から8年がすぎた今、そうしたNPOも、以前と同じ勢いでの支援は難しくなっています。復興庁も、2021年3月31日までに廃止されるので、これからの地域コミュニティーの再構築には、特に心配が残ります。

地域コミュニティーの開発は、現実には、震災がなくとも難しいものです。そもそも、それが成功するなら、過疎化など起こらないはずです。現在の被災地では、そんな難易度の高い地域コミュニティーの開発が(限られたリソースで)求められています。

介護現場に寄せられる期待

今、この瞬間も、被災地では、介護職たちが走り回っているはずです。復興住宅に引っ越してきたばかりで、孤立している高齢者にとっては、唯一の話し相手になっている可能性もあります。また、自宅が流されていなくても、周囲が壊滅してしまった地域でも、同じことが起こっているでしょう。

孤立している高齢者にとっては、地域コミュニティーというよりも、まずは、1人でもよいので、話し相手になる友達が必要です。その1人になっている介護職の中には、採算度外視での対応をしている人も多数いることと推測されます。

地域コミュニティーという大きなものが再構築されるかどうかも大事ですが、そうした介護職を支援することは、より具体的であり、もっと重要なことのように思われるのです。復興庁がなくなってしまう前に、どうか、そんな介護職を支援するための仕組みを作ってもらえたらと思います。

厚労省からも、被災地における介護報酬の取り扱いなどについて、様々な施策が出ています。しかし、人材不足の解消は、被災地でなくても困難なのですから、こうした施策だけで課題が解決することはないでしょう。現場での動きを、自治体や政府が後押しするような、そうした対応が必要なはずです。

※参考文献
・時事ドットコムニュース, 『復興住宅、悩む孤立=高齢者4割超、単身多く-東日本大震災8年』, 2019年3月7日
・読売新聞, 『[震災8年]高齢者 コンビニが支え…新しい街 戻らぬ商店街』, 2019年3月6日
・朝日新聞, 『被災地の介護細り…行き場なくした高齢者、異郷の施設へ』, 2019年3月2日

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