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介護福祉養成学校における学生が考えていること

介護福祉養成学校における学生が考えていること

介護福祉士の養成学校が重要

介護は、誰にでもできる仕事ではありません。どのような仕事でも同じですが、一人前として独り立ちできるようになるまでは、相当な時間がかかります。そうした時間をOJTのみに頼ることなく、少しでも早めるのが、専門教育でしょう。介護福祉士を養成する学校は、そうした意味でも非常に重要です。

意外と忘れられがちなのは、倫理教育の機会です。テクニカルに要介護者の介護ができるだけでは不十分ということを理解してもらうためには、介護福祉士の倫理規範を参照してもらうとよいでしょう。

こうした倫理教育が、数ヶ月でできるはずもありません。介護福祉士を養成する学校では、この点でも、十分な時間をかけた教育が行われています。ドイツでは、こうした介護の専門職の養成が、学費無料というだけでなく、学生に手当まで支払ってなされているのです。

日本の介護福祉養成学校における学生の調査

日本の介護福祉養成学校における学生の調査があります。こうした調査の常として、サンプル数は介護福祉士養成専攻(4年課程)に在籍する87名と少数ですが、ひとつ重要なポイントがあります。他の学校でも、同様の調査が行われることを願うばかりです。

その重要なポイントとは、学生の8割は福祉領域に興味関心があるにも関わらず、そこで就職したいと考えているのは6割にとどまるということです。ここにギャップがある理由は、給与が安く、仕事はつらく、精神的苦痛もあり、人手不足で、離職率も高いという介護業界の事実が認識されているからでした。

せっかく介護の専門性を身につけたのに、それを介護業界で活かさない人が4割いるということです。さらに、本当は介護業界で働きたいと考えていても、介護業界の労働条件がネックで、それを諦めている学生も2割はいそうだという点も、とても気になります。

介護のイメージ改善はむなしい

学生は、介護業界の事実を認識していました。これに対して必要なのは、事実としての課題の解決しかありません。それが進まないのに、人材確保のためのイメージ改善をすれば、たんなる嘘の宣伝になってしまいます。

本質的には、給与をあげて、夜勤を減らし、精神的苦痛のケアを行い、人材不足を解消し、離職率を下げるという課題解決をしないかぎり、意味がありません。嘘で集めた人材は、事実を知れば、すぐにやめてしまうからです。

そもそも8割の学生が、福祉領域には興味を持っているのです。そうした学生に対してやりがいを宣伝しても「そんなことは知っている」となります。学生も社会人も、介護業界の事実を知っています。むなしく良いイメージを宣伝する費用があるなら、それで、本当の課題を解決すべきではないでしょうか。

※参考文献
・堀江 竜弥, et al., 『学会等報告 介護福祉養成学校に在籍している学生の介護に対するイメージの実態』, 仙台大学紀要 50(1), 25-30, 2018-09

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