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地域ボランティアは、高齢者の生きがいには影響しない?

地域ボランティアは、高齢者の生きがいには影響しない?

活動と参加の重要性について

社会福祉の活動においては、WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)を参照する必要があります。このICFは、人間の健康状態を把握するには、生活機能の評価が欠かせないことを示しています。

健康状態の把握のための生活機能の評価は、大きく(1)心身機能(2)日常活動(3)社会参加の3つの分野について行われるべきとされています。しかし現実には、新しく生まれるヘルスケア事業の多くが(1)の心身機能の把握で止まってしまっています。

究極的には、リアルタイムの健康診断として、心身機能の評価は可能になっていくでしょう。しかしそれだけでは、人間の健康状態の把握には不十分であることは、すでにICFが示している通りなのです。(2)と(3)に相当する、活動と参加という側面での評価が求められているのです。

高齢者の生きがいに関する調査

それでも、少しずつですが、研究者たちは、高齢者の活動と参加に関する調査を進めています。そうした中で、高齢者の生きがいに関する調査(2018年, 山本, 高橋)があります。この分野の研究の宿命として、サンプル数は少ないのですが、重要な仮説が提唱されているので、以下、そこを考察してみます。

この調査で、もっとも重要なポイントは、高齢者の生きがいにとってもっとも大きな影響を与えるのは「友人との交流」であり、逆にほとんど影響を与えないのは「ボランティア活動」という部分です。また「高齢者世代との交流」も生きがいにつながるのに対して「若い世代との交流」はほとんどつながらないことも示されています。

調査の規模が小さく限定的なため、あくまでも仮説にすぎませんが、高齢者は「自分と同世代の友達との交流」を求めており「世代を超えたボランティア活動」は求めていない可能性があるのです。

高齢者を地域ボランティアの戦力と考える活動は多い

日本の財政難にともなって、地域ボランティアへの期待は高まっています。増え続ける高齢者の存在は、そうした地域ボランティアの主要な戦力として位置づけられているケースは多く、実際に、少なからぬ高齢者がボランティアとしての活動をしています。

こうした地域ボランティアは、一般には、高齢者の生きがいにつながると言われています。しかし、今回取り上げた調査結果からすれば、それは大きな誤解の可能性があるのです。もちろん、参加したい人だけが参加するのがボランティアでしょう。しかし現実には、仕方なく参加している人も多いかもしれないのです。

とはいえ、ボランティアは必要なので、そこに高齢者を誘い出すことは重要でしょう。ただ、そうしたボランティアの活動を設計するときは、高齢者たちが、そこで新たな友達関係を築けるような工夫をする必要がありそうです。

そもそも親友の数は、7年ごとに半減していくという研究結果があります。ここに、高齢者の生きがいにとって友達との交流が重要であることが事実とするならば、新たな友達関係の構築機会の必要性が見えてくるからです。

※参考文献
・山本 凌, 高橋 智美, 『新潟市北区で老人憩いの家を利用する高齢者の生きがいと社会参加』, 新潟医療福祉学会誌 18(1), 75-75, 2018-10

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