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徘徊を地域で見守るとはどういうことか

徘徊を地域で見守るとはどういうことか

徘徊に向き合う地域の見守り

主に認知症の方が一人で出歩いて家に帰れなくなったり、警察に保護されたり、行方不明になる「徘徊」が社会的に注目を集めるようになって久しいです。その数は年間約1万人とも言われ、深刻な事故につながることもあり、社会問題と化しています。

こうした中、郵便局や通信業界などの企業がビジネスとして見守りを行う取り組みをしていたり、自治体や地域住民が中心となって「認知症の人を地域で見守るネットワークづくり」という取り組みを行っていたりします。

中には徘徊模擬訓練と題した取り組みもあります。認知症の方に扮した人が街へ出歩き、参加者は認知症役の方を見つけて声をかけ、適切な機関につなぐ、という参加型のイベントです。このように増えゆく認知症の方の徘徊に対して、地域で見守るネットワークの構築は強く求められている機能です。

警察に保護されることは見守られているのか

ところで、私の事業所に登録されている認知症の一人暮らしの女性Aさんがいらっしゃいます。彼女は、家の中でならば自立した力は保てています。電話をかけてくることも出来ます。ただ、外に出ると道がわからなくなったり、どこを目指しているかという場所の名前も思い出せないという状態の方です。

そんなAさんは今年に入り5回以上警察に保護されています。自宅から昼夜問わず出歩いて、道がわからず、うずくまったり、立ち往生していしまうのです。そんな時、道行く人が声をかけたり、通報されて警察につながり保護されるのです。

先日は私の事業所へ来ようとして道がわからなくなり、フラフラと道で転んだところを通行人が助けてくれて交番まで送ってくださったそうです。あなたはこのAさんの話をどう思うでしょうか。

「そんな状態で一人暮らしなんて無理だ」
「何度も保護されて、介護職として何をしてるんだ!?」
「別居している家族はいないのか?いるならこんな状態で何も手を打たないのか」
「何かあった時誰が責任を取るんだ!?」

このように思うのではないでしょうか。Aさんの話を地域の介護や福祉、医療の専門職に伝えたところ、専門職でさえ「もう一人での在宅生活は無理じゃないか」と言う方が少なくありません。

Aさんは地域で見守られている

冒頭の地域での見守りネットワークの取り組みに尽力されている方々に私は問いたいのです。「健全に機能している地域の見守りネットワークとはどのような状態ですか」と。

私は徘徊に関する社会問題に関心が高い方々がいくら地域住民を喚起したり、徘徊されている方に声をかける訓練をしたとしても、増え行く認知症の方の徘徊を見守ることは限界があるのではないかと思っています。

そうした場面に出会うのは、そうした関心を普段は持っていないような一通行人であることが多いと思います。そうした人たちが警察に通報したりしてご本人が保護されることは、私は立派に地域の見守りネットワークが機能している状態だと考えています。

こうした考えはおかしいでしょうか。今月5回目には警察の方がわざわざ私の事業所までAさんを送り届けてくださいました。お巡りさんは「保護ではありません。道案内です」と笑顔でおっしゃっていました。

こうした、認知症のご本人を取り巻く実際的な関係者一人一人が、支えい、見守りあい、助け合うということを積み重ねていく先に本当の“地域の見守りネットワーク”が構築されると私は考えます。

そのためには、まず私たち専門職はもちろん、家族や地域、社会全体が「見守られながら地域で生きる社会」のコンセンサスを取っていかなければなりません。何か少しでもリスクが見られただけで施設や病院に入れるという選択はこれからの日本ではますます難しくなります。

もちろん、ご本人が徘徊しないで済むようにその原因へのアプローチや対策を講じることは並行して行うことは言うまでもありません。あなたやあなたのご家族、あなたの地域はどんな地域の見守りネットワークを思い描いているでしょうか。

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