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高齢者の年金のみを頼りとして暮らしている世帯は多数存在しています。年金額は、現役時代の仕事によって変動するようになっており、こうした世帯の中には、実質的に生活保護を下回る金額で生活しているケースも少なくないそうです。
現役時代に専業主婦で、夫に先立たれると、遺族年金と合わせても毎月10万円以下の年金になってしまうこともあります。こうした状況で、医療や介護を必要とすれば、さらに生活は厳しくなるのは当然です。
状況が深刻になるのは、こうした年金に頼って暮らす人が、高齢者だけではなく、その子供までもが含まれる場合です。高齢者の中には、なんらかの理由で定職を持たずにいる子供と同居していることがあります。こうした場合、子供の生活費もまた、親の年金から捻出することになります。
ただでさえ不足しがちな年金に、より多くの人数が依存すれば、生活費の切り詰めは、より深刻になります。低栄養になりやすいばかりか、外出も減り、高齢者の健康にとっては危険な状態です。そんな世帯は、今後、増えこそすれ、減ることはなさそうです。
そんな、親子が年金だけで暮らしているような世帯では、経済的な虐待が問題になりやすいのです。子供が、ギャンブルなどのために、親の年金を持ち出すようになってしまうと、生活が荒れます。そうなると、子供は親を虐待してでも、年金をせびるようになってしまう可能性が高まります。
そんな経済的な虐待から逃れるために、擁護老人ホームに入所させられる高齢者が増えているという報道があります。擁護老人ホームとは、通常の老人ホームとは異なり、主に貧困状態にある高齢者を(一時的に)受け入れる施設です。以下、AERA dot.の記事(2018年6月4日)より、一部引用します。
「人生100年時代を迎え、預貯金や年金だけでは生活に窮する人も増え、昔ながらの経済的困窮から養護に来る人が増える一方、新たなタイプの入所者もいます。親を支えるはずの40代、50代の息子、娘からの経済的虐待を受け、措置される人が明らかに増えています」 ここ10年の入所者のうち、約4割が家族からの虐待が理由だとこの施設長は話す。21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会の調査を見ても、虐待が目立つ。
「親の少ない年金を頼りに子どもが生きている。払わなければ手も出したり、家の外のエレベーターホールに追い出したりして、嫌がらせをする。一方で、もう自分は食べていけないからと、警察署の前に親を捨てていく息子もいました」(中略)「施設で受け入れても、親の年金を頼りに暮らしている子どもたちが追いかけてくる。そのため入所後は、新しい名前を名乗ってもらいます。電話がかかってきても取り次ぎません」(後略)
富裕層の高齢者は、現役時代の仕事によって、一般よりも多くの年金がもらえるようになっています。年金の必要はないにも関わらず、です。その一方で、そうした年金の財源は、現役世代が支えています(賦課方式)。しかし現役世代の中には、それこそ生活保護を下回る収入で暮らしている人もいるのです。
本来の社会福祉のお金は、社会的弱者の生活の底上げのためにこそ使われるべきものです。しかし現代の日本は、高齢者を一律で社会的弱者と認定する形になってしまっています。そもそもこれが、先に取り上げたような経済的虐待の背景の一つになっています。
マクロに考えれば、経済的な虐待から避難させ、保護するためにも費用がかかります。そのための費用を考えれば、困窮する子供に支援金を出したうえで、ギャンブルからの卒業や、就職の支援などをするほうが有効となる可能性もあります。
もはや、日本の社会福祉のための財源は、実勢にたいして不足する状況になっています。本来であれば社会福祉の対象となるべきところが、社会福祉から漏れていると、かえって余計な費用がかかる可能性もあるということを認識する必要がありそうです。
※参考文献
・AERA dot., 『年金目当ての子から逃げ…増える経済的虐待からの「老人ホーム避難」』, 2018年6月4日
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