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高齢者の外出は、QOL(生活の質)に大きく相関していることが知られています。外出が減ってしまうと、孤立する可能性も高まり、不健康になりやすいのです。そうなると、健常だった高齢者も要介護になったり、要介護の度合いも重度化してしまう可能性が高まります。
介護のプロは、これを認識し、なんとか高齢者を外に連れ出すことを、日常的に意識してケアを行っっています。しかし、そうした努力もむなしく、外出しなくなってしまう高齢者は、なかなか減らないのです。外出するかしないかの最終判断は、高齢者本人が行うことなので、強制することもできません。
そこで重要になるのは、そもそも高齢者はどうして、外出しなくなってしまうのかという理由を理解することです。この理由の分析においては、外部要因と内部要因の2つで追いかける必要があります。
外部要因としては、いつも買い物に行っていたスーパーが撤退してしまい、買い物はもっぱら宅配になるといった、本人としては対策のしようのないことが、その中身になります。外部要因の分析も必要ですが、こちらの分析は、その後の対策につながりにくいという特徴があります。そこで、内部要因の深堀が求められています。
この内部要因の分析結果が論文(渡辺, 前田, 2018年)になっています。この論文では、高齢者が外出をためらう理由のNo.1は「転倒への不安感」(56%)であることが示されています。これに続くのは「下肢の痛み」(44%)です。どちらも、足腰の衰えが背景になっているのです。
この結果から考えると、足腰の衰え→外出頻度の低下→QOLの低下→健康状態の悪化→足腰の衰え・・・という、悪循環の存在が深刻なものとして見えてきます。ここで、足腰の衰え以外の部分は、足腰の衰えの結果となっており、根本原因は、足腰の衰えにある部分は、大事な注目点でしょう。
介護のプロの間では「足腰が弱ると、大変なことになる」ということが、長く語られてきました。この論文は、そうした現場の感覚が正しかったことを裏付けるエビデンスの一つになっています。ただ、こうした高齢者に関する研究の限界として、サンプル数が少ないという点には注意も必要です。
とにかく、高齢者の足腰の機能維持は、一般に認識されている以上に重要な要素であり、その社会的な啓蒙の強化が求められそうです。ちょっとした遠回りや、あえて段差のある道を選択するといった、日常生活の中でできる足腰の機能維持のアイディアも、広く拡散されていくべきものでしょう。
※参考文献
・渡辺 長, 前田 千明, 『地域在宅高齢者の外出に影響する因子について』, 帝京科学大学総合教育センター紀要 総合学術研究 = Bulletin of Center for Fundamental Education Teikyo University of Science 1, 1-9, 2018-10-31
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