閉じる

介護する人、される人の認識の相違に関する研究

介護する人、される人の認識の相違に関する研究

介護する人、される人

介護における登場人物の中心には、介護をする人(介護者)と、介護される人(要介護者)がいます。介護には質の違いがあり、優れた介護が行われていると、介護全体の負担も小さくなります。逆に、よくない介護が行われていたら、介護の負担も大きくなります。

このとき、介護の品質は、どのように決まるのでしょう。実務的には、2つの評価が存在することになります。それは介護者による評価と、要介護者による評価です。それぞれの評価が一致すれば、そこで行われている介護の評価として信頼できることになります。

では、介護の現場では、この2つの評価の一致は、どの程度になっているのでしょう。サンプル数は36名(介護者18名、要介護者18名)と少ないものの、その事例の一つとして調査結果(扇谷, 2018年)があるので、今回は、その結果について考えてみたいと思います。

評価の一致率に関する調査結果

まず「おだやかな気持ちで過ごせている」という項目については、一致率が72%と最高になっています。一致していないケースでも、その差は正反対の評価になっているわけではなく「はい」と「どちらともいえない」というレベルでの差になっています。

これに対して「話し相手になる人がいるか」という項目では、一致率が44%と最低でした。さらに、一致していないケースの中には「はい」と「いいえ」の正反対での不一致が33%にもなっています。話し相手がいて、孤独ではない状態と言えるかどうかは、外部からの観察が難しいという結果になっています。

「介護に関するサービスに満足しているか」という項目では、一致率が50%程度となりました。一致率はそれほど高くはありませんでしたが、その差は、正反対というものは1つだけで、それほど深刻な差異にはなっていません。

外から見えること、見えないこと

「おだやかな気持ちかどうか」「満足しているかどうか」というのは、ある程度までは、外から観察することができるということでしょう。しかし「話し相手になる人がいるか」という、相手の孤独を理解するような項目については、実は、外からはなかなかわかならないのかもしれません。

孤独に見えても孤独ではなかったり、逆に、みんなに囲まれているようでも孤独ということがあるわけです。この調査では、介護者側は孤独ではないと判断していたのに、要介護者は孤独だったという真逆の評価になったケースが33%あったので、潜在的には、より多くの要介護者が孤独を感じている可能性があります。

孤独は、これまでなんどもKAIGO LABでも取り上げてきた通り、人間の健康にとって重大な影響を及ぼすものです。孤独であるだけで、死亡や要介護のリスクが高まることが知られており、大きな社会問題なのです。この調査では、その社会問題が、実際よりも小さく評価されている可能性が示唆されたということになります。

※参考文献
・扇谷 千尋, et al., 『高齢者の生活の質に関する本人と介護職員の評価の相違』, 卒業研究抄録集(旭川医科大学・看護学科) 平成30年度, 37-38, 2018-12

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由