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日本の地方に、過疎化が止められない地域が生まれていることは、誰もが知っていることでしょう。自治体の選挙に出る人がいなくなり、自治体としての機能が失われているようなところも増えてきました。そうした地域では、橋やトンネルを整備するための資金さえも枯渇してきています。
自治体で暮らす人々の大多数が、年金で暮らしている地域では、そもそも税収が(ほとんど)ありません。そうした地域が、これ以上の地域の延命をあきらめ、衰退するに任せるときの一つのサインとして、公共交通の停止があります。
公共交通が停止されることの意味は、2つあります。1つは、その地域から外に出ていくことが難しくなり、スーパーや病院に通うことが困難となる人が増えることです。自家用車の利用も、高齢となり免許を返納する人が増える中、難しくなってきています。
もう1つは、外の地域から、その地域にやってくる人がいなくなるということです。運が良ければ、ドラマなどで取り上げられて、急に観光客がくることもあります。しかし、そうした観光客は、その地域にお金を落としません。そもそも、買い物をしたり、宿泊をしたりする場所がないわけですから。
そうした中、北九州市における公共交通の空白地域に暮らす人々が20万人というニュースが入ってきました。北九州市と言えば、戦後、日本の四大工業地帯として急速に発展した地域です。以下、毎日新聞の記事(2019年1月22日)より、一部引用します。
人口減少数が4年連続全国最多の北九州市で路線バスの減便などが相次ぎ、バス停まで300メートル以上離れているなど「公共交通空白地域」の居住者が約20万6000人と全体の約2割に上っていることが分かった。(中略)
市内のバス路線は01~14年、利用者減や運転手不足から47路線117キロが廃止された。また、JR九州は17年に筑豊線若松駅などを無人化し、住民生活は不便になる一方だ。(後略)
北九州市は山地が多く、海岸沿いはカーブが多く道が入り組んでいるところです。そうした地域では、坂の上り下りが大変なのはもちろん、直線距離ではわからない移動の苦労があります。そうした地域から公共交通が消えることは、本当に大変な話なのです。
では、どうするのでしょう。こうした地域の延命には、多くの税金がかかります。その結果として、新たな雇用が生まれたり、地域が復活し、人口を増やしていくようなことになれば、税金の使い方として納得できるでしょう。しかし、地域が、ただ消滅するまでの期間を伸ばす延命に税金が投入されることには問題があります。
その税金は、貧困の救済を行ったり、小中学校にエアコンを設置したり、難病の治療に補助金を出すといった他のことにも使えるものです。いまの日本は、そうした他の用途と、地域の延命を天秤にかけるしかない状況になっています。本当に辛いことですが、ただ成り行きに任せれば、より悲惨なことにもなりかねません。
これ以上の治療が望めない地域の延命に、これ以上の税金を投入することをやめ、その地域の尊厳死も議論すべきときにきているのではないでしょうか。地域の貴重な記憶を編纂し、素晴らしい資源は正しく保存して、それらを後世に残すような作業と合わせて、ポジティブで積極的な地域の消滅も考えるべきだと思います。
国土交通省は、2010年には人が暮らしていても、2050年には誰もいない無居住地となる地域が、19%にもなると想定しています。そうした地域の延命のために税金を使うことが、本当に、その地域の尊厳にとって正しいことなのか、議論を開始する必要があると思います。その結論は、それぞれの地域が出すべきものです。
※参考文献
・毎日新聞, 『バス停まで300m以上「公共交通空白地域」に高齢者ら20万人 北九州市』, 2019年1月22日
・国土交通省, 『人口関係参考資料』
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