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介護をする人(介護者)が、介護をされる人(要介護者)の虐待をしたというニュースは、ほとんど毎日のようにニュースになります。ニュースになるのは、プロの介護職による虐待が多いのですが、実際には、家族や身内による虐待のほうが、プロによる虐待よりも100倍多いということは認識しておく必要があります。
そうして虐待が問題視される影で、介護をされる人による、介護をする人に対する暴力は、ほとんどニュースになりません。KAIGO LABで取り上げたケースとしても、2016年1月に報道された高齢者による介護職員への暴行くらいしかありません。
現場の実感としては、発生している件数で並べてみれば、高齢者による暴力>家族による虐待>プロによる虐待、となるはずです。しかしニュースとして報道されるのは、この真逆になっている点は、実態の把握を大きく歪めてしまう危険性があるでしょう。
そうした中、東海テレビが、高齢者による暴力を報道しています。暴行容疑ではなく、殺人未遂容疑となっている点で、かなり深刻です。以下、東海テレビの報道(2019年1月3日)より、一部引用します。
愛知県あま市のグループホームで、2日午後、入所していた83歳の女が女性職員の首をしめ、ケガをさせたとして殺人未遂の疑いで逮捕されました。(中略)容疑者は2日午後3時10分頃、あま市七宝町の「グループホームきららあま七宝町」で、入浴中に介護をしていた女性職員(22)が着ていたパーカーのひもを引っ張り首を絞めた、殺人未遂の疑いが持たれています。
グループホームに入所しているのは、基本的には、認知症の高齢者です。グループホームでは、9人程度の認知症の高齢者が、専門スタッフの助けを受けながら共同生活をしています。そもそも認知症に苦しんでいる人に、殺人未遂容疑が成立するのかという部分でも、難しいケースになりそうです。
なお、幸い、女性職員は軽傷で、命に別状はなかったようです。それでも心配なのは、こうして殺人未遂容疑で逮捕された入所者と、その家族のことです。おそらくは、元のグループホームには戻れないでしょうし、次の受け入れ先も簡単には見つからないと思われるからです。
統計があるわけではありませんが、介護をされる高齢者から暴力を受けたことのある人は多数います。プロの介護職であれば、年に数回は、自分自身の被害ではなくても、そうした場面に遭遇するものです。ただ、いちいち通報したところで、状況が改善するわけではないので、通報しないだけの話です。
また、介護をする家族が、介護をされている高齢者から暴力を受けた場合も、通報はしないでしょう。特に、高齢者が認知症になっている場合は、なおさらです。来てもらいたいのは警察ではなくプロの介護職であり、求めているのは逮捕ではなく具体的な支援だからです。
介護をされる高齢者による暴力は、それと認識されてはいないものの、大きな社会問題です。例外的に発生しているのではなく、現場では一般的に発生していることだからです。世界に先駆けて高齢化社会に突入している日本だからこそ、こうした前例のない社会問題への対応が世界から注目されています。
※参考文献
・東海テレビ, 『入浴介護中に・・・グループホームで入所者の83歳女が女性職員の首絞める 殺人未遂容疑で逮捕』, 2019年1月3日
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