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どうして「見守りビジネス」はうまくいかないのか

どうして「見守りビジネス」はうまくいかないのか

乱立する「見守りビジネス」の現状

離れて暮らす親の毎日を見守るという「見守りビジネス」は、現在、郵便局をはじめとして、各種デバイスメーカーなどが激しく争うレッドオーシャンになってきています。そうして多数の「見守りビジネス」が存在してはいるものの、ついぞ、大成功をおさめる「見守りビジネス」は出てきません。

「見守りビジネス」に参入している企業からすれば、こうした見守りというのは行動分析です。そうした行動分析の結果をマーケティングに応用することで、大きな集客につなげられるはずでした。しかしそもそも「見守りビジネス」は、うまく行く気配がありません。

ビジネスがこうした小康状態になると、決まって言われるのが「草の根活動」という言い訳です。少しずつでジワジワと市場を広げていって、いずれは大きな収益につなげたいというときに「草の根活動」といった言葉が使われます。しかし、後に大成功となる「草の根活動」というのは、ほんとんどありません。

ビジネスがうまくいく時というのは、市場のニーズを的確にとらえており、一気に広がるものです。より専門的には「キャズム」とよばれる市場の谷間をさっさと乗り越えるビジネスだけが成功していきます。しかし「見守りビジネス」のほとんどは、この「キャズム」を超えられずにいるようです。

本当に親を見守りたいですか?

スマホから、親の毎日を見守ることができるとしましょう。そのときあなたは、毎日、親の姿をスマホを通して確認したいですか?スマホの画面にうつしだされる、一人寂しくテレビをみながらコンビニ弁当を食べる親の姿を、カメラを通して観察したとして、それでどうするのでしょう。

「見守りビジネス」がうまくいかない根本原因は、ここにあると考えています。つまり、社会的には高齢者の見守りが必要ではあるものの、誰も、直接的に親を見守りたいと思っている人はいないということです。

真のニーズは、親には最後まで、できるだけ元気で幸せでいてもらいたいということでしょう。しかし「見守りビジネス」が示すのは、それほど元気でも幸せでもない親の姿です。それを見せられたとしても、子供は、嬉しい気持ちになったりはしません。

ちょっとのお金で、親が元気になったり、幸福になったりするなら、お金を支払う準備のある子供は多いと思います。しかし、親を見守ることは、それ自体では、手段にも目的にもなり得ないというところで「見守りビジネス」は破綻していると考える必要があります。

子供が求めていること

心身の弱ってきている高齢の親を持つ子供は、なにを求めているのでしょう。先にも述べたとおり、それは、できるだけ元気で幸せに暮らしてもらうことです。ただ、高齢者になると社会との接点が薄れ、続けていた趣味もやめてしまったりもします。親の元気と幸せは、一般的には、時間とともに減少するものなのでしょう。

本当に恐ろしいのは、孤独であって、健康であるかどうかではありません。体温や血圧といったバイタルデータ上で問題はなくても、孤独であるなら、大問題です。しかし高齢者になって、様々な持病を抱えることになっても、孤独とは無縁の、仲間に囲まれた楽しい人生であれば、問題はありません。

難しいのは、高齢になってくると、昔ながらの付き合いは減ってしまっており、友達なども疎遠になっていたり、死別していたりして、かなり少なくなっていることです。要するに、高齢者になり、仕事からも身をひいている状態で、新たに友達を作っていくことの支援が必要だということです。

本当に求められているのは、GPSなどによるドライな見守りではなく、社会活動に参加している中で自然と行われるウェットな見守りなのです。それは単に、地域の人々と日々交流し、友達と語り合っているというだけの話なのですが、どうにもうまく、それを生み出すことができていないのです。

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