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高齢者のボランティアが活況?その危険性についての指摘もある

高齢者のボランティアが活況?その危険性についての指摘もある

高齢者のボランティアが活況?

高齢者にとって、もっとも恐ろしいことは、社会との関係性が切れ、孤独になってしまうことです。孤独は健康に悪く、孤独であるだけで、要介護リスクが高まったりもします。国際的には、孤独を社会問題として認識し、孤独担当大臣(イギリス)を設置したりといった動きもあるくらいです。

そうした孤独が生まれてしまう背景は、やはり、仕事をやめてしまうことが最大の要因です。定年などで仕事をやめると、社会との接続が切れてしまい、それまで元気だった人も、急に老け込んでしまったりもするものです。

ここで、チームビルディングの視点からも、ただ集まってお茶を飲むのではなく、みんなで仕事をするということが、関係性の構築にとっても有益です。であれば、現役を一度は引退した高齢者であっても、可能な範囲で、仕事を得ていくことが大事であることが見えてきます。

そうした背景から、未経験で取りかることができる仕事を安価に受け入れ、それを有償・無償のボランティアとして高齢者にこなしてもらうといったデイサービスが登場し、話題になってきています(朝日新聞, 2018年)。同じ取り組みは全国でやれるはずですし、その効果が高いことは十分予想できるからです。

ボランティアの危険性について

ボランティアというと、単純に、困っている誰かのために頑張るという印象があるかもしれません。しかし、ボランティアの現場では「自分は良いことをしている」といった認識が、結構なトラブルの原因となることが常識だったりします。

意外かもしれませんが、ボランティアには、その活動をするのは「あくまでも自分のため」といった、客観的でドライな認識が重要です。この認識を持てないと、ボランティアをする方も、される方も、不幸になってしまうことが多いのです。

もちろん、ボランティアは、結果として社会に対して良い行いをしていることになる場合が多いものです。同時に、ボランティアをする方は、結果の良し悪しに関わらず(お金以外に)多くのものが得られます。その代表的なものは、社会での居場所の獲得や、社会課題への取り組みを通して得られる自らの成長です。

「ボランティアは、自分のためになる」という認識を持たない人は「これだけのことをしているのに、認めてもらえない」といった被害者意識を持ってしまったりもします。こうした被害者意識は、承認欲求の裏返しであることは明白でしょう。しかし社会の不幸は、誰かの承認欲求を満たすために存在しているのではありません。

善意の押し売りは求められていない

ビートたけし氏が、そんなボランティアをめぐる問題について、鋭い指摘をしています。行方不明となった2歳児を発見したスーパーボランティア(尾畠春夫さん/78歳)の影響として語ったものです。以下、NEWSポストセブンの記事(2018年12月3日)より、一部引用します。

最近じゃ災害や事件の現場に「何か手伝えることはないか」って駆けつける変なジジイやババアが殺到しているらしい。で、現場で逆に他人に迷惑をかけることになって「何しに来たんだ」って話も増えているんだって。「モンスターボランティア」なんて呼ばれてるタチの悪いのもいるって聞くぜ。

オイラは「自己客観視できない老人ほど見苦しいものはない」と思っている。まさにこの高齢ボランティアの急増ってのは、いかに自分を引いた目で見ることができない人間が多いかを物語っている。(中略)

ふと思いつきでボランティアに手を出して、「自分も何かやって褒められたい」「人助けをしていい気持ちになりたい」と考えてるようなヤツとは覚悟も気構えも違う。なかでも一番違うのが、自分が役に立つのか立たないのか、冷静に判断できる力なんだよな。(後略)

ボランティアを進める際に注意したいこと

結局のところ、ボランティアの現場で求められるのは、一般社会での仕事と同じように、高い専門性と時間的なコミットメントです。素人が、ちょっとした空き時間で関わっただけで、大きな成果が出るようなことは、まず存在していません。

仕事ができない人でも、ボランティアなら、という感覚は間違っています。ボランティアであっても、お金をもらっていないだけで、実際に行っているのは仕事です。ボランティアにも、プロの仕事としての品質と納期を求められることは、忘れるべきではありません。

この意味において、学生がボランティアをすることには、大きな意味があるのは当然です。将来、なんらかの分野でプロとして仕事をするようになる前に、プロ意識の厳しさを学び、成長することができるからです。大学入試や就職において、ボランティア経験がプラスに評価される背景もここにあります。

プロとしての緊張感があればこそ、ボランティアは、社会的な居場所を獲得し、成長することもできるわけです。ですから「無償で良いことをやってあげている」といった感覚を持っている人にはボランティアは不向きであり、まずは一般の仕事で成果を出すことに専念したほうがよいと考えられます。

※参考文献
・NEWSポストセブン, 『ビートたけしが語る「高齢者ボランティアの落とし穴」』, 2018年12月3日
・朝日新聞, 『デイで「お仕事」 高齢者にやりがい』, 2018年12月3日

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