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一般社会では、企業が顧客に商品を買ってもらうと「買ってもらって、ありがとうございます」ということになるでしょう。これはしかし、需要と供給において、供給のほうが多くなっている状態においてだけ成立する話です。
逆に、需要のほうが多くて、供給のほうが少ない状態では、商品を「売ってもらって、ありがとうございます」となります。心理的には、品薄の人気商品を、友達に譲ってもらったりする場合と同じことです。
さて、現代の日本社会において、このように、需要と供給の関係性が、一般社会とは逆転している商品があります。ここまでの話で気づくと思いますが、まさに介護が、こうした商品の代表です。
そもそも介護を必要とする人に対して、プロとして介護サービスを届けてくれる人材(介護職)は足りていません。2025年には38万人もの介護職が不足すると考えられていることは、これまで何度も指摘してきたとおりです。
普通、こうした状態になれば、殿様商売が横行するはずです。「売ってもらって、ありがとうございます」という状態では、顧客は列をなしており、売る側が好きなように顧客を選べるからです。
しかし、介護業界は(いまのところは)殿様商売になっていません。その理由は、介護業界の職業倫理が、一般社会のそれとは異なるからです。介護業界は顧客(介護サービスの利用者)をお金のあるなしで差別することなく、できるだけ多くの人に介護を届けることに注力しています。
一般社会は「合法である限り、儲かればそれでいい」という方向に向かっています。大企業でさえ、違法ではないというだけで、詐欺まがいの商品を売ることもあります。こうしたところは、行き過ぎた資本主義の弊害として、それなりに広く認識されてきているでしょう。
そうした中、介護業界は「儲けよりも、大事なことがある」という、一般社会では建前になりつつある職業倫理が残っています(当然、例外もありますが)。介護は社会福祉であり、社会福祉は社会的弱者を支援するものだからです。資本主義は、性格として、経済的な強者に寄り添うこととは対象的です。
だからこそ、全63業界でも最悪の待遇と言われる状態でも、介護業界は、これまでなんとか頑張ってきたのです。しかし、いよいよ介護業界も、資本主義の原理に逆らうのが限界になりつつあります。実際に、いまの介護業界は、毎年、過去最高の倒産件数を更新しているような状態です。
本当は、一般社会も「儲かるだけではダメ」となり、介護業界も「儲けも大切」となって、相互に近づいていくことが理想だと思います。すべてが「合法である限り、儲かればそれでいい」ということになれば、社会的弱者が支援されなくなるからです。
そして今後の日本では、社会的弱者が増えていきます。人工知能の浸透によって失業する人も増えていきます。自分がそうなったとき「合法である限り、儲かればそれでいい」という考えで生きてきたことを後悔しても遅いのです。
介護業界は、いまにも、資本主義の原理に負けてしまいそうです。資本主義には良いところもありますが、現代の状態は、行き過ぎていると感じている人も多いでしょう。その感じを大事にして、自分に可能な範囲で、介護業界を応援してもらいたいのです。一般社会が、介護業界に学べることもきっとあるように思います。
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