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介護現場は、日本の未来にとって、非常に重要度の高い職場です。同時に、とても危険な職場でもあります。特に介護現場における腰痛は、職業病(業務上疾病)として知られており、対策が非常に大事なことも、広く認識されています。
それでも、どうしても腰痛を中心とした労災がなくなりません。背景には、介護業界の急拡大によって、安全教育が進んでいないこともあるようです。まずは以下、yomiDr.の記事(2018年10月25日)より、一部引用します。
高齢者や障害者の介護などを担う社会福祉施設で昨年、腰痛や転倒など4日以上の休業を伴う労働災害で死傷した職員が前年比5・5%増の8738人となり、過去最悪を更新したことが、厚生労働省のまとめで分かった。経験が3年未満の人の労災が4割超を占め、安全教育の徹底などが急務となっている。(中略)
社会福祉施設での労災の内訳は、高齢者をベッドから車イスに移す際などの「動作の反動・無理な動作(腰痛など)」の2983人が最も多く、転倒の2893人が続いた。年齢別では50歳以上が57%に上った。仕事の経験年数は3年未満の人が43%を占めた。介護需要の高まりで新たに採用された職員や、中高年層が労災に見舞われやすい傾向がうかがわれた。(後略)
実際に、介護現場の人々と話をすると、ボディメカニクスに習熟したベテランであっても、腰痛に悩まされているのが現実です。これは、個別の問題ではなくて、本当に深刻な社会問題です。腰痛の解消は、介護人材の不足とも直結しているからです。
抱えあげない介護(ノーリフト)の浸透も大事な活動です。同時に、そうしたノウハウを身につけた人であっても、腰痛になりうるというところにも注目される必要があります。早期に、介護現場のための支援スーツなどが開発され、投入されていくことが重要でしょう。
筋力が落ちて、身体の動作が鈍っている中高年が、介護現場に投入されるということは、今後の日本を考えると仕方のないことです。そうした中高年であっても、安全に介護ができる環境の整備は、他の問題よりも優先順位が低いと考えられているとするなら、それは大問題になります。
ここまでの話は、介護のプロである介護職に関することです。介護職であれば、程度の差はあれ、腰痛の予防に関する教育を受けていますし、その危険性を認識しているでしょう。その先にあるさらに大きな問題は、在宅介護をする素人がもっとも心配です。
いまの日本には「介護は誰にでもできる」という誤解が蔓延してしまっています。実際の介護は、自分自身の腰痛の予防も含め、様々な分野の知識が求められる専門性の高い仕事です。医療については素人という言葉を受け入れても、介護については素人と言われると怒る人がいるのは、本当はおかしな話なのです。
「介護は誰にでもできる」と甘くみていると、すぐに腰痛になってしまいます。老老介護が増えているということと合わせて、そこから、介護をする側だったはずの自分が、介護をされる側になってしまうこともありえます。そう考えると、この問題の社会性と重要性が、あらためて認識されるでしょう。
※参考文献
・yomiDr., 『福祉施設の労災死傷者、過去最悪の8738人…介護経験3年未満が4割』, 2018年10月25日
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