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日本全国の自治体で、ボランティアポイント制度が広がっています。このポイントがたまると、換金されるケースもありますが、多くは商品がもらえたり、なんらかのメリットが得られるようになっています。本音ベースでは、低賃金の労働力の確保が目的になっている制度です。
もちろん、ボランティアを通しての自己実現もありますし、社会参加が進むという意味で、ボランティアは重要な社会活動です。ただ、本来のボランティアは、支払い能力を持たないターゲットに必要なサービスを届けるときの手段です。これが、通常の営利活動があるところに入ってくると、大きな問題となります。
よくある話として、あるビジネス領域にボランティアが入ってきたとします。ボランティアによるサービスは、無償かそれに近い低価格ですから、通常のビジネスは、そこでは勝負にならず、撤退します。そしてボランティアだけがサービスを提供することになるわけです。
しかし、ボランティアというのは、その性格として、瞬発力はあっても継続性はありません。存在する多数の事例をみても、特定の個人が善意ではじめた活動は、組織化されることなく、その個人の撤退によって終わるということが多いのです(もちろん例外もあります)。
ボランティアポイント制度というのは、こうした活動を、少しでも延命しようという苦肉の策です。しかし延命にはそれなりの効果があるでしょうが、大きな問題を同時に生み出すことになります。それは、そのボランティアが活動する分野における営利企業と、ボランティアポイントが得られないボランティア活動を排除してしまうことです。
非常に恐ろしいと感じるのは、日本全国で、介護領域におけるボランティアポイント制度が無邪気に進められていることです。短期的には、それで効果もあるでしょう。しかし中・長期的には、介護領域でボランティアが多数活動している地域からは、営利の介護事業者は撤退するしかなくなります。
介護の全てを、ボランティアが担ってくれるのでしょうか。ボランティアの多くは、高齢者だったりします。そうしたボランティア自身に介護が必要になった場合、だれがそれを担ってくれるでしょう。その地域からは、ボランティアが存在したことによって、プロの介護事業者は撤退していたりもします。
人口減少社会にあって、ボランティアは、永続的に確保できる労働リソースではありません。その事実を踏まえた上で、短期的、突発的に足りなくなる労働力をボランティアで補うためのボランティアポイント制度であれば、優れた効果を発揮するでしょう。しかしそれが長期になると、必ず恐ろしいことになります。
繰り返しになりますが、ボランティアというのは、いかなる社会でも必要です。それは、サービスの受益者に支払い能力がないというケースは、多数あるからです。それこそ、地球環境にとってよい活動をしても、地球はお金を支払ってはくれません。こうした領域では、どうしてもボランティアを必要とします。
ただ、すでに民間企業が事業を提供し、サービスの受益者に、なんらかの支払い能力があるところでボランティアを募ることには、細心の注意を払う必要があります。長期的な社会の継続性(サステナビリティ)にとっては、ボランティアは、逆向きに働く可能性もあることは、広く知られる必要もあります。
介護領域でボランティアが増えると、介護業界は、無償やそれに近い労働力と競争することになります。それは結果として、介護業界を疲弊させ、介護業界を破壊するものです。ボランティアが、本当に、長期にわたって24時間365日のサービスを提供し続けてくれるなら、それもあるかもしれません。しかし、ボランティアにその覚悟を期待するのは間違っています。
だからこそ、賃金労働としての介護業界が成立しているのでしょう。もうすこし、諸外国のケースにも学ぶべきだと思います。たとえば、諸外国では、地方議員というのはボランティアです。権力を持ちたい人は多いわけですから、そうしたところこそ、ボランティアで充足させるべきではないでしょうか。もちろん、ボランティアポイントも渡せばいいでしょう。
そもそも、日本の地方議員の多くは名誉職です。立候補し、当選するだけでも、多額の資金が必要になることは、誰もが知っています。そうした地方議員の労働に、わざわざお金を支払う必要があるでしょうか。無償でも、場合によっては、地方議員であることにお金を支払う人もいるでしょう。
こうした意見には「お金のない人が政治家になる可能性を閉じるのか」という反論があるものです。しかし、本当にお金のない人が政治家になっているケースは少数です。逆に、そもそも自分の人生さえままらない人が、政治家として、日本の財政に責任が持てるのでしょうか。大いに疑問があります。
もちろん、政治には、財政以外のトピックもあるため、少しでも多様な人が政治家になるのは望ましいことです。ただ、財政は政治の根幹であり、そこが成功すれば、他の問題は小さくできるという意味で、財政こそが政治の要であることは疑えません。それに成功している人こそ、ボランティアで政治家をやるべきだと思います。
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