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韓国の敬老堂に変化が?敬老堂が高齢者から支持されていない

韓国の敬老堂に変化が?敬老堂が高齢者から支持されていない

韓国の敬老堂(Kyungrodang)

韓国の高齢化問題は、日本よりもさらに厳しいものになっています。日本では約17%の高齢者が貧困に苦しんでいますが、韓国ではこれが約半数にまでなっています。75歳以上の高齢者の自殺率は、日本の約3倍です。そして2008年からはじまっている韓国の介護保険制度は、非常に限定的で、自己負担も15%以上という状況です。

韓国といえば、日本以上に、儒教の影響が色濃い国です。そうした儒教国でさえ、本来は敬われるべき高齢者を支援しきれない状況になっているのです。そして、こうした悲惨な状況は、ある意味で、日本の近未来の姿を示しているものでもあります。日本もまた、そうした未来に向かってしまっています。

しかし韓国には、敬老堂(Kyungrodang)という仕組みがあります。敬老堂とは、韓国政府が管理運用しているカルチャースクール的なもので、韓国内に5万ヶ所以上も存在しています。敬老堂は、高齢者の社会参加をうながしつつ、引きこもりを防止することに効果があるとされてきました。

もはや敬老堂は高齢者から支持されていない?

この敬老堂がうまくいっていないというニュースが入ってきました。財政難に苦しむ韓国にとって、敬老堂の存在は、高齢者福祉における要として機能しなければ、希望が見えなくなります。しかし背景が価値観の変化にあるだけに、対応はかなり難しいようです。以下、中央日報の記事(2018年10月16日)より、一部引用します。

韓国の代表的な高齢者福祉施設である敬老堂が老年世代に冷遇されている。韓国社会は2017年65歳以上の人口比率が14%を突破して高齢社会に入った。だが、敬老堂を訪れる高齢者の足は遠のくという逆説的な現象が起きている。(中略)

このように敬老堂が冷遇されている理由は、老年世代の欲求と必要が過去とは明らかに変化しているためだ。先月、報告書「敬老堂活性化」を発表した大邱慶北(テグキョンブク)研究院のパク・ウニ研究委員は「老年世代の学歴と健康水準が高まり、これまで地域の憩いの場だった敬老堂がそれ以上の役割を求められている」と分析した。(中略)

パク・ウニ研究委員は「欧州の敬老堂で実験的に取り入れられているさまざまな革新モデルに注目するべき」と強調した。フランスは敬老堂にボードゲームや任天堂Wiiゲーム機を設置し、青少年と老年世代が一緒に楽しむ「ゲーム図書館」を作って大きな反響を呼んだ。(後略)

敬老堂は、韓国にとって非常に重要なものであり、また、この整備にかけては、世界でも最先端とされてきました。しかし、その中身は、高齢者世代の価値観の変化について行けず、かなりの苦労をしている様子が伺えます。そして参考にされているのが欧州の事例というところは、日本に似ています。

もはや「高齢者らしさ」という同調圧力は有効ではない

これは日本でも同じことですが、とにかく「高齢者らしさ」という同調圧力は、もはや、どこの国でも歓迎されないものです。そもそも高齢者と言われること自体に不快感を持つ人も多い時代に「敬老堂」という名前を用いること自体に問題もありそうです。そこに行けば「高齢者らしい高齢者」になってしまうからです。

たしかに敬老堂のように、高齢者が気軽に足を運ぶことができる社会参加の場は必要です。しかしそこは、高齢者だけが隔離されている場ではなく、年齢に関係なく誰もが楽しめる場になっていないと、ユニバーサルデザインの視点からは間違っているという結論になります。

日本にも敬老堂のようなものは必要です。いまの日本では、これに相当するのは、デイサービスになってしまいます。しかしデイサービスだと、そもそも要介護認定を受けないと利用できません。とはいえ日本版の敬老堂は、韓国と同じものではいけないでしょう。その根本には、ユニバーサルデザインがなければなりません。

あくまでもアイディアですが、まず、VRやARによって身体的な障害が問題にならない環境が整備されており、金食い虫の物理的な場(ビル設備など)が必要とされない必要があります。そこでは、eスポーツを中心として、新旧のゲーム、アニメ、音楽など、日本らしいコンテンツが楽しめる場になっているのがよいと思います。

こうした日本らしい、高齢者でない人々も集う敬老堂(年齢に関係なく人が集まる場)は、世界に向けた輸出が可能でしょう。既存の場との差別化にとって鍵になるのは、やはり、ユニバーサルデザインです。ユニバーサルデザイナーを育成するための予算と、その教育が行われる場もまた、整備されていく必要があります。

※参考文献
・中央日報, 『「死ぬまで行くつもりない」 敬老堂を冷遇する高齢者…なぜ?=韓国』, 2018年10月16日

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