閉じる

定年退職をする人材に向けた、介護業界の説明会(東京都)

定年退職をする人材に向けた、介護業界の説明会(東京都)

介護人材が足りない

介護人材が足りないという話は、様々なメディアで繰り返し報道されてきました。2025年には38万人もの不足が発生すると考えられており、このまま、この問題を放置してしまうと大変です。いざ、介護が必要になっても、それを担ってくれる人がいないということになりかねないからです。

そうした中、東京都は、これから定年退職をすることになる人材に向けた、介護業界の説明会を始めようとしています。説明会は無料とのことで、これから多くの企業がこの説明会を行うものと思われます。以下、日本経済新聞の記事(2018年10月16日)より、一部引用します。

東京都は介護職の担い手を増やすため、企業や学校を退職する前の社員・職員向けに介護職に精通した人材を講師として派遣する。介護福祉士の養成校の講師らによる講習を開き、介護職の魅力などを紹介する。都内で急速に進む高齢化をにらみ、シニア世代の退職後の就職を後押しする。(中略)

講習は無料。介護保険制度を分かりやすく紹介するほか、介護職のやりがいなどを説明する。テーマやプログラムは今後対策が必要になる認知症など、企業のニーズに応じて策定する。(後略)

意外とインパクトの大きい取り組みになる

定年退職をする人材に対して、セカンドキャリアに関する研修をする企業も増えてきています。そうしたセカンドキャリアの具体的な可能性として、介護業界で働くことを考えてくれる人が増えることは、非常に良いことです。

もちろん、介護を担う人材を増やせるという意味もあります。それだけでなく、企業で様々な業務を経験してきた人材が介護業界で働くようになると、介護業界の生産性が高まる可能性があります。これは、意外と大きなインパクトがあるのではないでしょうか。

統計的に考えると、定年退職をした人に介護が必要になるまで、10年以上の時間があります。この10年の間に、介護業界で働いた人材は、自分に介護が必要になったとき、上手に介護されることができるようにもなっているでしょう。また、介護の現実を理解すれば、介護予防にも真剣に取り組むようになる可能性もあります。

問題はやはり待遇の悪さだろう

定年退職を前にした人材に向けた、介護業界の紹介は、非常に意義深い取り組みになりそうです。ただやはり、ここには一つ大きな問題があります。それは、介護業界の待遇の悪さです。日本における全63業界でも、介護業界の待遇は最下位にあるという事実は重いものです。

待遇が悪いと、こうして介護業界の紹介をしたとしても、働いてくれる人材が集まらないという直接的な問題もあります。しかしそれ以上に大きいのは、賃金の安い業界で働く人材が増えてしまうと、日本全体の生産性が低下し、税収も減ってしまうという部分です。

そもそも介護業界の財源の大部分は税金(および介護保険料)です。どんどん利益を生み出して税金を納める業界で働く人材が減り、税金を使うばかりの業界で働く人が増えてしまうと、当然、国の状態は悪化します。ここになんらかのメスが入らないと、日本は破綻してしまいます。

※参考文献
・日本経済新聞, 『企業に介護講師派遣 東京都 シニアの就職後押し』, 2018年10月16日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由