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ボランティアが足りない・・・そもそも労働力が足りない時代のボランティアとは?

ボランティアが足りない・・・そもそも労働力が足りない時代のボランティアとは?

人手不足による倒産が深刻化している時代に

昨日の記事にしたとおり、現代の日本では、中小企業の人手不足による倒産が深刻化しています。人手不足の倒産というのは、そこに人がいたら企業として存続することができ、利益をあげて、国に税金を納めることができたということです。

この背景にあるのは、日本の人口減少です。そもそも人が減っていくわけですが、高齢化もあって、労働力の減少は、人口の減少以上に急激なのです。そんな人手不足は、当然、ボランティアの不足としても現れてきます。以下、タウンニュースの記事(2018年10月5日)より、一部引用します。

寒川町社会福祉協議会では運転ボランティアを募集している。(中略)同協議会では、福祉有償運送事業を実施しており、電車やバスなどの利用が難しい高齢者や障がい者のために車での通院・通所の手伝いをしている。まだまだボランティアの数が不足しているという。

労働力が足りない時代にボランティアは成立するのか?

1人の人材がいたとします。その人材は、中小企業に勤務することと、ボランティアとして働くことのどちらを選ぶべきなのでしょう?これには(1)個人の視点(2)雇用主の視点(3)国の視点、の3つの視点があります。

まず(1)個人の視点からは、どちらでも問題ありません。個人の価値観で、自分の人生を考えて、決めればよい話です。(2)雇用主の視点からは、中小企業もボランティアを進める組織も、どちらも自分のところに来てもらいたいわけで、平等な勝負です。(3)国の視点からは、しかし、税収という観点から、この人材には中小企業で働いてもらいたいはずです。

そもそも社会福祉協議会の財源の一部は、税金です。企業で働く人材が減ってしまえば、社会福祉協議会も、サービスの維持が難しくなります。そう考えたとき、先のニュースにあるように、社会福祉協議会がボランティアの確保に困っているという話は、そのまま、問題だとは言い切れないのです。

合成の誤謬(fallacy of composition)と言う通り、ミクロには正しいことが、マクロには正しくないということは少なくありません。目の前の人が困るからという部分最適で、ボランティアを増やしてしまえば、国が傾いてしまうような状況かもしれないのです。ただ、ボランティアも必要なわけで、なんとも悩ましいところです。

しかしボランティアも重要な存在だということ

マクロ、全体最適を考えるなら、人材は企業で働くべきです。とはいえ、サービスの受益者にお金がないという場合は、民間の企業にはサービスが提供できません。ボランティアとは、本来、サービスの受益者に支払い能力がない相手に対しても、必要なサービスが行き渡るためにこそ必要なものです。

今後も、この社会には、ボランティアが必要です。ただ、これだけ人手不足が深刻化している時代には、ボランティアもまた、内容が制限されていくことも仕方のないことです。ボランティアの世界においても、人材の奪い合いが発生しているという事実に、目を向けないとなりません。

そう考えたとき、オリンピックで11万人ものボランティアが求められるという状況の異常性が気になります。この11万人は、一時的であれ、他のボランティアの現場を離れたりもするわけです。今更ですが、なんのためのオリンピックなのか、今一度よく、考えてみる必要があります。

せめて、ボランティアは、本業として企業で仕事をしている人が、余暇の時間を使うという形で提供するようにしていかないと、国が傾いてしまいそうです。マクロな視点からは、できるだけ常勤のボランティアは減らしていかないと、そもそも、ボランティアを支えている組織そのものがなくなってしまうのです。

※参考文献
・タウンニュース, 『運転ボランティアを募集』, 2018年10月5日

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