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日本の人口減少は、広く知られていることでしょう。しかし「最近、人が減ったな・・・」という具合に、それを本当に実感している人は、多くはないと思います。ただ、一部には、日々、これを実感している人々がいます。中小企業の経営者です。
今の日本は好景気ですから、本来であれば、企業の業績もよくなるはずです。しかし日本の人口減少が進んでいるため、中小企業は、人材を採用することができず、それを原因とした倒産が相次いでいるというのです。以下、東京商工リサーチの記事(2018年10月9日)より、一部引用します(改行位置のみKAIGO LABにて修正)。
企業倒産が低水準な推移の一方で、中小企業を中心に人手不足が深刻度を増している。「人手不足」関連倒産は、「後継者難」型が中心で現状は推移しているが人手不足感が解消されない中で、「求人難」型の今後の動向が注目される。2018年9月の「人手不足」関連倒産は、27件(前年同月比22.7%増、前年同月22件)で、6カ月連続で前年同月を上回った。
内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が21件(前年同月16件)、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が3件(同4件)、中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が3件(同1件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型がゼロ(同1件)だった。
多くの人が気づいているとは思いますが、一昔前であれば、一流大学を出た新卒しか入社できなかったような大企業への転職が容易になっています。これは、好景気を背景とした人手不足が原因です。そうした状況において、あえて中小企業にいる必要もないというのは、労働者としては当然の判断でしょう。
もちろん、必ずしも大企業のほうが中小企業よりもよいということはありません。しかし、大企業のほうが安定しているのは確かですし、福利厚生も充実していて、残業規制などへの対応もよいことが多いのも事実です。そして統計的に言えば、大企業のほうが、中小企業よりも給与がいいという点は見逃せません。
先のニュースでは、後継者不足を原因とした倒産が最多になっていました。これも、考え方によっては、後継者になりえるような優秀な人材は、少なからず、大企業に取られてしまっていると読むことも可能です。間接的ではあっても、これは、後継者の求人に失敗しているとも考えられます。
そうして倒産してしまう中小企業は、ある意味で、社会的な役割を終えているとも言えます(もちろん、そうでない企業もあるとは思いますが)。日本の高度成長期を支えた功績は疑えなくても、それを継続するためには、今の時代にそくした新たな価値を生めないと、市場で淘汰されてしまうということなのでしょう。
介護業界最大手のニチイでさえ、マーケットシェアからすれば、介護市場全体のわずか1.4%程度にすぎません。介護業界は、まだまだ戦国時代にあって、業界内での企業の順位が確立していないのです。介護業界は、中小企業でひしめき合っているというのが実情です。
しかし今回のニュースにあったとおり、中小企業は人手不足になっています。さらに介護業界は、他の業界よりもずっと深刻な状態にあるということは、過去になんどもKAIGO LABで主張してきた通りです。
介護人材は、2025年には、約38万人の人材が不足すると考えられています。これは業界レベルの話ですから、この不足する人材は、介護業界の外の業界から獲得してこないと、どうしても埋まりません。しかし、介護業界の待遇は、全63業界でも最悪かそれに近い状態なのです。
中小企業が不利になるというだけでなく、介護業界の企業というだけでも、さらに不利なのです。こうした状態で、本当に、介護業界は人手不足を解消できるのでしょうか。仮に解消できたとしても、38万人もの労働力を介護業界に取られてしまえば、他の業界の中小企業は倒産するしかなくなります。
介護業界の人手不足が解消されない場合、いざ、自分の親に介護が必要になっても、誰も介護の負担を担ってくれる人がいないという状況になります。そうなれば、富裕層でもなければ、介護は自分でやらないといけくなるでしょう。結果として、介護離職が増える未来が、どうしても見えてきてしまいます。
※参考文献
・東京商工リサーチ, 『9月の「人手不足」関連倒産は27件、6カ月連続で前年同月を上回る』, 2018年10月9日
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