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高齢者(65歳以上)の就業者数は、先の8月時点で、872万人とのことです(総務省発表)。10年前と比較して297万人も増えているという結果になります。背景にあるのは、日本の少子高齢化と長引く好景気に支えられている圧倒的な労働力不足です。
老後の蓄えに不安の大きい高齢者としても、仕事があって、年金以外の収入があることは、心理的に重要です。また、社会との関わりを維持し、孤独になりにくい環境に身を置くことで、健康を維持しやすいという側面も、決して無視できない重要な部分です。
なにかと良いことづくめな高齢者の労働ですが、この背景には、高齢者のほうが時間が自由になりやすいというものもあるようです。以下、日本経済新聞の記事(2018年9月29日)より、一部引用します。
働く高齢者が増えている。総務省が28日に発表した8月の労働力調査によると、65歳以上で就業している人の割合は前月から0.5ポイント上昇し24.5%だった。高齢者の4人に1人が働いている計算だ。人手不足から企業が高齢者の採用を増やしているためだ。(中略)
今まで高齢者を雇っていなかった企業も採用に動き始めた。パートタイムで働く65歳以上の人は前年同月から26万人増え242万人。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「高齢者は時間の融通が利きやすいことも採用を後押ししているのではないか」と分析する。(後略)
ただし、この幸福な状態は(1)まだ働ける健康な高齢者が十分にいる(2)好景気による慢性的な労働力不足がある、という2つの条件に依存していることを忘れてはなりません。今後はさらに後期高齢者が増えるということ、および人工知能の台頭による大失業社会がやってくることを考えると、これは一時的な話にすぎないことがわかります。
「最近の高齢者は元気だ」というのは、65〜74歳の前期高齢者に限った話です。75歳以上の後期高齢者ともなれば、アクティブシニアというくくりから離れ、老化も目立つようになるものです(もちろん例外はありますが)。どうしても、現役を引退すべきときが、誰にも訪れます。
人工知能は、もしかしたら、人間がら仕事を奪わないかもしれません。ただ、少なくとも、いまの好景気が永遠に続くようなことはないでしょう。不況になれば、現役世代と高齢者が仕事を奪い合うような事態も想定されます。そうした労働者間の競争は、平均賃金を下げる方向に影響力を持ってしまうでしょう。
現状のように、ラッキーな前提条件がないと、高齢者の雇用というのは維持することができないのです。国のありかたを考えるなら、起こりうる最悪の状態を想定し、それでもなお、人々が健康で文化的な生活を営めるような形にしていかないとならないはずです。
ここで、起こりうる最悪の状態とは、景気が悪化すると同時に、人工知能の実用化が進むといったことでしょう。景気が悪化すれば、企業の経営者には、コスト削減(人件費削減)の圧力がかかります。その圧力は、人間の仕事を人工知能で置き換える方向を後押しするでしょう。そうなると、一気に失業が進んでしまうはずです。
失業した人たちが、あらたに、人工知能の開発に関われるのであれば、問題ないかもしれません。しかし、そのようなことは、マクロには考えにくいでしょう。そうした最悪を想定すると、日本はいまこそ、ベーシックインカムの本格的な議論を開始すべきだと思います。それは、自分が失業してからでは遅いのです。
※参考文献
・日本経済新聞, 『働く高齢者4人に1人 8月、人手不足で採用増』, 2018年9月29日
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