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高齢者の見守りに、番号を割り振る?それ、マイナンバーの仕事では・・・

高齢者の見守りに、番号を割り振る?それ、マイナンバーの仕事では・・・

高齢者の見守り問題

高齢者の見守り問題の背景には、認知症があります。認知症によって、徘徊(本来は無目的にウロウロすることですが、実際には無目的ということは少ない)してしまい、自宅に戻れなくなってしまう高齢者が増えているのです。

これへの対策として、高齢者に対して、広い意味で番号を割り振るという流れができてきています。たとえば、新宿区はキーホルダーに番号を、福島市はQRコードを活用したりしています。こうした流れ自体は、必要であり、今後も広がっていくことと思います。

ただ、どうしても気になるのは、こうして高齢者に割り振られる番号は、本来であれば、マイナンバーでよいのではないかということです。ある意味で、認知症の高齢者にだけ割り振る番号は、差別的です。これに対してマイナンバーはユニバーサルデザインになっており、誰もが番号で認識できるようになっているからです。

マイナンバーは社会に貢献しているか?

マイナンバーは、日本に住民票がある人であれば、誰もが持っている個人を識別するための番号です。一般には国民識別番号(共通番号制度)とも呼ばれるもので、スウェーデン、デンマーク、オランダといった社会福祉の先進国でも採用され、成果をあげています。

同時に、アメリカや韓国では、マイナンバーが悪用され、社会問題にもなっています。上手に利用すれば、社会福祉が向上し、国家レベルでの生産性が増すのですが、管理が難しいという特徴があるのです。

日本は、世界に遅れること数十年という段階で、やっとマイナンバーを採用しました。しかしその結果は、お世辞にもうまく行っているとは言えないものです。もし、うまくいっているなら、高齢者の見守りにはマイナンバーが利用されるはずです。しかし、新たにコストをかけて、独自の番号を付与するようなことが行われているのです。

どうしてこんなことになってしまったのか

本来であれば、マイナンバーは、行政の様々な面倒を、一気に解決することができる制度なのです。高齢者の見守りも、マイナンバーと連動していれば、見つけた段階で、その人の病歴や薬の必要性などもわかります。対応する警察や病院の関係者も、的確で迅速な対応が可能になるのです。

しかし、日本におけるマイナンバーは、残念ながら、ヨーロッパの社会福祉の先進国のようには普及していません。行政の窓口では、国民は公務員に「マイナンバーなんて何の役にたつのか!」と責め立てています。公務員も、マイナンバーは、これまでの仕事の上に乗ってきて、ただ雑務を増やすばかりになってしまっています。

印鑑のように、個人でも簡単に偽造できて、セキュリティー的にもなんの意味もないことが維持されている国で、マイナンバーは早すぎたのかもしれません。国民からしても、マイナンバーのメリットがまったく理解できない状況になっています。そのくせ、マイナンバーの維持管理コストばかりが増えてしまっているのです。

思い切った対策が必要だ

マイナンバーには、情報漏洩の危険性があります。しかし、印鑑のような危険な仕組みを容認できるのですから、多少の情報漏洩は織り込んで、マイナンバーへの移行が必要な段階にきていると思います。もはや、印鑑のように無駄な行政コストを道楽で維持していられる財政的な余裕が日本にはないからです。

具体的には、印鑑と印鑑証明の廃止、健康保険証の廃止、介護保険証の廃止、各種公的な免許証の廃止、印鑑の廃止、住民票と住基カードの廃止など、とにかく、ひどすぎる無駄をすべて、マイナンバーに一括で移行させるような抜本的な対応が必要です。

そしてこれを、国内2社(責任を8:2程度に分散させる)に任せるということも重要です。今のマイナンバーは、国内大手ITベンダー5社に任されていますが、結果としてこれは失敗だったのです。失敗を失敗として認識できないと、改善することも不可能です。

大きなお金が動きますから、公平性が議論されたのはわかります。しかしこれでは責任が分散され、速度が遅くなり、品質が犠牲になることは、今のマイナンバーが示している通りです。高い授業料でしたが、失敗を認め、仕切り直しが必要ではないでしょうか。

※参考文献
・毎日新聞, 『高齢者見守りキーホルダー 新宿区が無料配布 「番号」記し身元確認/東京』, 2018年9月17日
・福島市, 『福島市認知症高齢者QRコード活用見守り事業』, 2018年7月6日(更新)

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