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2週間以上も会話していない高齢男性が15%もいる

2週間以上も会話していない高齢男性が15%もいる

社会的つながりの大切さ

人間は社会的動物です。いかに「一匹狼」を自負していたとしても、それは本能に反することです。そもそも人間は、自然環境の中では非常に弱い存在です。猛獣から安全を確保するためにも、また、食料を確保するためにも、集団で動かなければ生存できないようになっています。

そんな人間にとって、孤立するということは、死を意味しています。なので人間は、集団から孤立すると、大きな精神的ストレスを抱えてしまうのです。結果として心身の健康を害することになり、最悪は要介護状態にまで至ります。すでに要介護状態であれば、その要介護状態が悪化するということも起こります。

KAIGO LABでも、例えば『高齢者(要介護者)の社会的な生活の状況を把握しておきたい』という記事で、高齢者の孤立状況について、簡単なアセスメントを紹介しています。私たちは、こうしたアセスメントを参考にしながら、誰も孤立しない社会を築いていく必要があるのです。

社会的な孤立の現実は?恐ろしい結果が報道された

そんな高齢者の社会的な生活の状況について、恐ろしい結果が報道されました。なんと、高齢男性の15%もが、実質的に孤立していることがわかったのです。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年8月18日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

国立社会保障・人口問題研究所は去年7月、全国のおよそ1万世帯とその世帯で暮らす個人を対象に、地域の人とのつながりなどについてアンケート調査を行いました。このうち、ふだんどの程度人と会話をするか尋ねる質問で、「2週間に1回以下」と回答した人は全体の2%でした。

ところが、65歳以上の高齢者で1人暮らしをしている男性に限ると、15%、およそ7人に1人に上りました。一方、同じ高齢者の1人暮らしでも女性では5%でした。さらに、1人暮らしの高齢者で、「日頃の簡単な手助けを頼れる人がいない」と回答した人も男性で30%、女性で9%と男女で開きがありました。(後略)

定年退職をケアのはじまりと考えるべきだ

こうした高齢男性も、仕事をしていれば、社会的に孤立することはなかったはずです。定年退職を心待ちにしている人も多いですが、定年退職は、少なからぬ人間にとって地獄です。休みというのは、仕事の合間にあってこそ、楽しめるものでしょう。しかし、毎日が休みだと退屈になります。そして退屈とは人間にとっては牢獄なのです。

定年退職自体は、日本の解雇規制が強い雇用環境においては、企業の存続にとって重要な仕組みです。しかし、定年退職をきっかけとして、完全に引退してしまうことは、本人の心身の健康にとって非常に大きなリスクなのです。そして体調を崩してしまえば、国の社会福祉財源が痛んでしまいます。

定年退職というイベントがあったあとは、嘱託や時短勤務であってもなんとか職を維持することが大事な一歩です。そうして、できるかぎり完全な引退をしないように注意することも大切です。高齢者のケアは、要介護認定を受けてから始まるのでは遅すぎます。高齢者のケアは、定年退職というイベント直後から開始されるべきです。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『高齢男性 社会的に孤立 「会話が2週間で1回以下 」15%』, 2018年8月18日

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