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日本の人口減少と、長引く好景気の影響で、人材不足が日本中で顕在化しています。介護業界も、東京都と愛知県で有効求人倍率が5倍を突破するなど、もはや、介護サービスを受けたくても、それを提供してくれる人がいないという状況が顕在化してきています。
しかしこれからも、こうした状況が続くのかというと、どうも違うようです。いまのような人材不足は、企業を、人工知能による自動化の方向に進めます。この自動化がどんどん加速すると、今度は逆に、人が余るようになるからです。以下、日経XTECHの記事(2018年7月24日)から、一部引用します。
三菱総研によれば、2030年までにAI(人工知能)などのデジタル技術の進化で自動化・無人化が進む。これにより730万人の雇用が失われる。デジタル技術の開発などで新たに400万人の雇用が生まれるが、差し引き330万人の雇用が失われるわけだ。少子高齢化による労働人口の減少を加味しても「人材余剰は避けられない」(三菱総合研究所 政策・経済研究センター 山藤昌志 主席研究員)という。(後略)
ここで注意したいのは、差し引き330万人という結果ではありません。失われる730万人の雇用は、そのまま、デジタル技術の開発で生み出される新たな雇用としては吸収されないからです。失業した人が「じゃあ、デジタル技術の開発をやろう」と考えても、デジタル技術の開発は、そう簡単に身につく専門性ではありません。
こうした人工知能によって、多くの雇用が失われます。では、介護業界はどうなのかというと、この影響は少ないという印象になります。人工知能によって奪われる職種ランキングなどでも、対人援助職としての介護職は、かなり下位にランキングされることがほとんどだからです。
介護業界では、2025年には38万人が、そして2035年には79万人の人材が不足すると言われます。先のニュースで伝えられたように、2030年までに730万人の雇用が奪われるとすると、このうちの約1割は、介護業界で働くことになるでしょう。それでも、600万人以上の人が、職を探してさまようことになります。
これから、介護業界には、多くの外国人技能実習生がやってきます。ただ、こうした外国人技能実習生は、最長でも10年程度しか日本にいられない設計になっています。そのあとは、人工知能によって職を奪われた人々が、介護業界に殺到するのかもしれません。
そうして残されるのは、人工知能の導入コストを負担するくらいなら、人間を雇ったほうが安い仕事だけです。もちろん、人工知能を中心としたデジタル技術を開発する仕事は増えていきますが、これは、先にも述べたとおり、ちょっとやそっとの勉強でできるようになる仕事ではありません。
介護の仕事もまた、世間で信じられている以上に、高度な専門性が必要になる仕事です。職を失う730万人もの人材のうち、適性があって介護の勉強をしている人だけが、再就職先として介護業界のほうから「選ばれる」ことになるでしょう。
そんな介護業界の待遇は、現時点ですでに、全業界の中でも最悪と言われています。それでも、職がないよりは良いと考える人は多いでしょうが、介護は誰にでもできる仕事ではないのです。どうしても、730万人のうちのかなりの部分が、長期的に失業することになるでしょう。
※参考文献
・日経XTECH, 『人手不足は一転して人材余剰に、三菱総研が2030年を試算』, 2018年7月24日
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