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セブンイレブンが高齢者雇用に向けて本格稼働か?

セブンイレブンが高齢者雇用に向けて本格稼働か?

コンビニ業界の課題と可能性

コンビニの業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。同時に、コンビニを利用する顧客の高齢化も進んでおり、コンビニとして、介護事業の周辺への参入実験を繰り返しています。特定のコンセプトが全国展開されていないところをみるに、この参入実験は、なかなか難しいようです。

こうした中、過去のコンビニを提供側、高齢者を顧客とする図式を脱却する動きが出てきました。高齢者にコンビニで就労してもらい、同時に、顧客としてもコンビニを活用してもらおうという試みです。以下、日本経済新聞の記事(2018年7月19日)より、一部引用します。

静岡市は8月、65歳以上の高齢者を対象にした就労説明会を初開催する。まずセブン―イレブン・ジャパンと連携し、コンビニエンスストアの業務内容の紹介やレジ打ち体験などを行う。高齢者の就労を後押しし、市が掲げる「健康長寿のまち」構想の実現を目指す。

市は7月上旬、同社と高齢者見守りネットワーク協定を締結。官民連携で高齢者の就労を促すことで合意した。説明会は市の高齢者就労促進事業の一環として市が主催する。今後は協定を結んでいる他企業にも同様の取り組みを働きかける。(後略)

背後にある危機意識が強く感じられる

アクティブシニアと呼ばれた65〜74歳の前期高齢者は減少してきています。これに対して、75歳以上の後期高齢者の数が激増しています。「いまの高齢者は元気だ」「もう高齢者と呼ばない」といった意見を目にすることがありますが、これは65〜74歳の前期高齢者についてのものでしょう。

実際に後期高齢者になると、行動半径が小さくなり、自宅から遠く離れたところに出かけることがきつくなります。この流れを、コンビニ各社は、危機として認識しています。免許の返納も進んでいるため、こうした後期高齢者には、コンビニまで来てもらえなくなる可能性が高まるからです。

自宅にいる後期高齢者に対してアプローチする宅配は、コンビニの得意領域ではありません。また、宅配のための物流コストも大きいため、儲けが少なくなってしまいます。こうした状況にあって、コンビニには、改革が求められているわけです。

買い物以外にコンビニに来る理由を創造する

今回のニュースは、こうした背景を受けて、高齢者に、買い物以外の目的でコンビニに来てもらう理由を創造するというものです。ここには、お金を稼ぐために、同僚に会う楽しみを享受するために、そして仕事を通して社会とつながるために、高齢者がコンビニに来てくれたらという希望があります。

孤独であることは、喫煙や肥満よりもずっと健康に悪いことだという指摘があります。今回のセブンイレブンの試みがうまくいくなら、人材不足を解消しつつ、介護予防も進め、高齢者の預金不足問題の改善にもつながります。

近江商人の心得として「三方よし」という考え方があります。これは「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」という3つの視点から、ビジネスを考えていこうというものです。この試みは、コンセプトとしてはこの「三方よし」になっているでしょう。問題は、実際に機能するかという部分です。注目していきましょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『静岡市、高齢者に就労説明会 セブンイレブンと連携』, 2018年7月19日

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