閉じる

生協でさえ、健康保険組合を解散させるような時代

生協でさえ、健康保険組合を解散させるような時代

民間の福利厚生に支えられてきた日本の社会福祉

最低限の福利厚生は、憲法に従って、国が整備すべきものです。しかし最低限というのはギリギリの状態であり、現実的に、それだけでは不十分というケースがあることは、誰もが知っていることでしょう。そんな日本の福利厚生を支えてきたのは、健康保険組合の存在でした。

健康保険組合は、特に大企業が維持してきた制度です。保険料の一部を企業が負担し、また、従業員自らも保険料を納めています。結果として、病気になったときに手厚い保証があるのは当然です。しかしそれ以上に、この保険は、定年退職後も使えるため、老後の不安がかなりの程度減らせることが大きいのです。

こうした制度の特徴は、あくまでも、定年退職後の高齢者が少ない場合にのみ機能することは明らかでしょう。現時点でも、すでに6割の健康保険組合は赤字であることがわかっており、こうした健康保険組合の解散が増えてきているのです。

生協の健康保険組合が解散する意味について

そんな中、予想されていたことですが、生協(生活協同組合)の健康保険組合が解散を決定しました。生協の理念は、消費者の生活を、消費者自らが守ることです。そんな生協でさえ、健康保険組合は守りきれなかったことになります。まずは以下、毎日新聞の記事(2018年7月11日)より、一部引用します。

全国の生協(コープ)の従業員や扶養家族約16万4000人が加入する「日生協健康保険組合」は11日までに、本年度いっぱいで解散し、来年4月から中小企業向けの協会けんぽに移ることを正式に決めた。高齢者医療への拠出金負担で保険料が上昇しており、協会けんぽへ移れば保険料率が下がることが主な理由。(後略)

ここで、協会けんぽというのは、企業の代わりに、国が国債を発行して財務的にサポートするものです。当然、その中身は健康保険組合のものよりも中身が薄いものです。保険がないよりはずっと良いのですが、それでも、一般の健康保険組合からすれば、かなり見劣りするものになります。

本来の生協は、国に頼ることなく、消費者の横のつながりで成立するものでした。そんな生協が健康保険組合を解散するというのは、実は、生協の理念が問われる大きな決断なのです。それがいま、起こってしまっています。

ジワジワと、しかし確実に悪化する国民生活

これからも、大型の健康保険組合の解散が続いていきそうです。大多数の健康な人にとって、それは小さなニュースかもしれません。しかし、自分が高齢者になったとき、かつての高齢者が受けられたようなサポートは、受けられなくなっているのです。

本来であれば、消費者が横の連携によって助け合うような、まさに生協のような存在が求められる時代なのです。しかし、日本にはそうした組織は根付きませんでした。非常に残念なことですが、富裕層でないと、自分の生活を維持することさえ難しい時代に突入しています。

ジワジワと、しかし確実に、私たちの生活は悪化してきています。近い将来、過去を振り返って「あの時代は贅沢だった」という印象になるわけです。それは、バブル世代がバブル時代を懐かしむのと同じような感覚なのだと思います。あくまでも比較の問題ですが、今はまだ、かなり良い時代なのです。

※参考文献
・毎日新聞, 『生協健保組合 解散決定 16万人、高齢者医療負担で』, 2018年7月11日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由