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介護事業者の倒産が、過去最多ペースで増えている

介護事業者の倒産が、過去最多ペースで増えている

介護事業者の経営状態

介護事業者の経営状態は、かなり厳しいものになっています。売上に相当する介護保険からの収入は、国の財源が厳しくなってきている背景を受けて、徐々に減らされる傾向にあります。それなのに、人材の採用コストは上がり続けており、都市部では、有効求人倍率が5倍を突破してしまっているのです。

これから、介護を必要とする要介護者は、どんどん増えていきます。しかし、そうした介護をサービスとして提供する介護事業者は、どんどん倒産しているというのが現状です。これを介護業界の再編として考えることも可能ではあります。しかしやはり、介護の担い手が足りていないのに、介護事業者が倒産していくのは不安です。

そんな中、介護事業者の倒産が、過去最多ペースで増えているというニュースが入ってきました。特に、訪問介護とデイサービスが厳しいようです。これから在宅介護を必要とする人が増えるのに、これは危険な状態ではないでしょうか。まずは以下、東京商工リサーチの記事(2018年7月9日)より、一部引用します。

2018年上半期(1-6月)の「老人福祉・介護事業」倒産は45件と前年同期の40件を上回り、年上半期での最多記録を更新した。このペースで推移すると、介護保険法が施行された2000年以降で年間最多だった2017年の111件を上回る可能性が高まった。(中略)

倒産の増加要因は、同業他社との競争激化で経営力、資金力が劣る業者の淘汰が加速していることや、介護職員不足の中で離職を防ぐための人件費上昇などが挙げられる。特に、介護業界の人手不足は「国内景気が悪い時の採用は順調だが、好況になると人材が他業種へ流出する」など、景気と逆行する傾向が強い。(中略)

業種別では、最多が「訪問介護事業」18件(前年同期14件)と、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」18件(同18件)。次いで、「有料老人ホーム」が7件(同2件)、サービス付き高齢者住宅などを含む「その他の老人福祉・介護事業」が1件(同4件)だった。(後略)

在宅介護は本当に可能なのか?非常に不安になる

老人ホームは、介護保険からの持ち出しも多く、また、入居費用が一般に高くなるため、多くの介護家族にとって、現実的な選択にはなりません。実際に、老人ホームに入居しているのは、要介護者の15%程度にすぎません。

つまり、85%の要介護者は、在宅介護を受けているわけです。そんな在宅介護をこなすには、訪問介護事業とデイサービス事業の活躍が欠かせません。しかし、これら訪問介護事業とデイサービス事業において、倒産件数が顕著になっているというのが、今回のニュースの重要な部分になります。

いざ、自分の家族に介護が必要になったとき、その介護は要介護者の自宅で行われる可能性が高いでしょう。しかし、その要介護者の自宅周辺に、こうした在宅介護を支援してくれる介護事業者がいないかもしれないのです。そうなると、食事、入浴、排泄といった介護は、すべて、家族の誰かがしなければならなくなります。

この状態になってしまった場合、仕事を続けながら、介護もこなすというのは、現実的ではなくなってしまいます。介護離職をしなければ、そもそも介護ができない状態になってしまえば、自分がミッシングワーカーになってしまうかもしれないのです。

介護事業者独自の経営努力では、もはや限界なのではないか

介護保険は、40歳以上になると、誰もが強制的に加入させられる国の事業です。これは保険ですから、介護が必要になった場合、それを使えないというのは、おかしな話です。しかし、こうして介護事業者がどんどん倒産していく状況は、そのような未来につながっていると考えるべきでしょう。

介護事業者独自の経営努力では、この状況を打開するのは困難だと判断できます。いまこそ、官民一体となって、介護事業者の経営改善に動くべきでしょう。具体的には、混合介護の法整備や、混合介護として提供できる商材の開発など、できることは(まだ)あります。

これは、どこかの他人の話ではありません。私たちの家族に介護が必要になるとき、そして私たち自身にも介護が必要になるときが、いつか必ず来ます。そのときになってから「どうして、こんな状況になっているんだ」と文句を言っても遅いのです。より多くの人が、当事者として、この課題に向き合っていかないとなりません。

※参考文献
・東京商工リサーチ, 『2018年上半期「老人福祉・介護事業」の倒産状況』, 2018年7月9日

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