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日本においては、金融資産のうちの6割を、60歳以上の世帯が所有しています。しかし、日本の高齢者の多くは、こうした資産を投資に回すことが少なく、日本の経済発展にはあまり寄与していないことが、長く問題視されてきました。
証券会社は、株の売買が行われるときの手数料で利益を稼ぐという事業を展開しています。そうした証券会社にとって、日本の金融資産の過半数を持っている高齢者に株を買ってもらうことは、事業の継続にとって非常に重要なことです。これは結果として、経済の発展にもつながります。
とはいえ、仕事を引退している高齢者にとって、金融資産は、命綱でもあります。こうした金融資産を目減りさせてしまったら、生活の維持すらできなくなるからです。そのため、高齢者の多くは、そう簡単には株を買わないということになります。証券会社は、こうした状況に苦しんできました。
高齢者の金融資産をめぐるニーズは、上手に運用して増やすということではありません。そうしたことを目指す高齢者もいるでしょうが、多くは、金融資産を減らさないで、自分の死後に、そうした金融資産を子供や孫に相続していくということを考えています。
証券会社は、無理に金融資産を増やすような提案をするのはやめて、そうした高齢者のニーズに向き合い始めています。証券会社による、新たな競争がはじまっているのです。以下、朝日新聞の記事(2018年7月4日)より、一部引用します。
有名寺院でのセミナーや財産の生前整理、お墓の相談――。証券業界で相続などの高齢者ニーズを取り込もうとする動きが加速している。各社は専門知識を持った人材を育成するなど営業体制を強化。年々、高齢化していく顧客をつなぎとめ、高齢者の子の世代とも取引を続ける狙いがある。(中略)
野村証券は1月下旬、東京・日本橋で初めて「終活セミナー」を開催。同社と提携する生命保険、信託銀行、葬儀、墓、遺言などの各分野の企業がブースを設け、証券の顧客と支店担当者が一緒にまわった。(中略)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は3月までに、相続や承継についてアドバイスする「アセットマネージャー」80人を全国62店舗に配置した。大和証券グループ本社は現在100店にいる「相続コンサルタント」を、早期に全店に配置することを目指す。(後略)
この流れが強くなってきていることから、証券会社が、介護に入ってくるのは間違いないでしょう。証券会社が直接的に介護事業を行うことは考えにくいですが、証券会社にとっては、高齢者のお金の流れの全てに関わることが、自分たちの利益になるからです。
たとえば、証券会社が、なんらかの介護サービスの紹介に成功した場合は、証券会社に手数料が入るような仕組みは十分に考えられます。特に、老人ホームの紹介は高額の紹介料が得られる仕事です。証券会社として、ここに注目しないはずはないでしょう。
今後は、証券会社が「終活」の一環として、老人ホーム見学ツアーはもちろん、様々な介護事業者の見学ツアーを企画していくものと考えられます。徐々にではあっても、金融業界と介護業界の間にあった大きな溝は、埋まっていくことが予想されるのです。
※参考文献
・朝日新聞, 『墓も葬儀も 高齢者の相談に何でも対応 証券大手が営業』, 2018年7月4日
・ダイヤモンド, 『個人金融資産の6割を占める高齢者のカネが狙われている!』, 2013年7月8日
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