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日本よりも台湾に向かう?外国からの介護人材

日本よりも台湾に向かう?外国からの介護人材
台湾(台北)の夜景

深刻化が止まらない介護業界の人材不足

日本の労働力不足は極限に達しています。女性の就労率も、アメリカやフランスよりも高い状態です。また、労働者に占める高齢者の割合は、ダントツでトップというのが、今の日本です。それでもなお、人手不足が叫ばれています。その背景にあるのは、深刻な人口減少です。

その影響をもっとも受けている業界が、介護業界です。人口減少は、少子高齢化とともに進んでいます。増え続ける高齢者は、そのまま要介護者の増加を意味しています。介護の需要はどんどん増えていくのに、働き手は急速に減っているのです。実際に、介護職は、2025年には、38万人も不足すると考えられています。

そうなると、必然として、外国人の労働者に、日本の介護の現場で働いてもらうことになります。当然ですが、外国人だからいけないということはなく、問題となるのは国籍ではなくて、個人の能力ややる気でしょう。これまでも、介護の現場で頑張る優秀な外国人は多数いました。

外国人労働力の国際争奪戦を認識する必要がある

現在、介護事業者や商工会議所、業界団体やボランティアなど、多くの介護系の組織が、外国人労働力の獲得に動いています。しかし、最近になって、その成果が出なくなってきているというのです。その背景は、激化する外国人労働力の獲得競争です。

NHKが報道(2018年5月20日)した『縮小ニッポンの衝撃』によれば、日本よりも10年ほど遅れて高齢化が進んでいる台湾が、日本よりも、外国人の介護職に選ばれているのです。その背景には、かなり難しい問題が隠れていました。以下、外国人の介護職に求められる労働基準を、日本と台湾で比較します。

日本
台湾
在留期間 最大5年 最大12年(在宅介護は14年)
在留中の転職 原則として不可 転職してもOK
身分 外国人実習生 労働者
言語能力 日本語試験への合格が必要 語学力は問わない
介護技術 一定レベル以上が望ましい 介護技術は問わない

これだけ条件で負けている日本を選んでくれる外国人というのは、日本の文化など、労働以外の面での魅力にひかれてのことでしょう。しかし、日本の外国人実習生の受け入れ(外国人技能実習制度)は、現代の奴隷労働として、国際的に非難されています。こうした実情は、インターネットがこれだけ普及している現在、簡単に広がります。

世界を相手に労働条件で勝てるのか?

こうした外国人労働力をめぐる日本の競合国は、台湾だけではありません。特に、介護の需要が高まりつつある世界中の先進国は、真剣に、外国人労働力の獲得に動いています。日本の介護は、こうした諸外国の条件に勝てるような労働条件を、介護の現場で実現しないとならないのです。

当然のことなのですが、長期的には、日本における介護現場の労働条件が、労働者の国籍によらず改善されない限り、介護の人材不足は止まりません。介護業界の待遇(40歳モデル賃金)は、全63業界中でもダントツの最下位にあります。これを改善しないままに外国人労働力を獲得することなど、不可能なのです。

若い労働力というのは、どの国にとっても、国を運営する上での要であり、納税者です。そしてひと昔前とは異なり、日本はもはや、アジアから憧れの目でみられる国ではありません。本気で獲得に動かなければ、労働力は、日本に来てくれません。それどころか、日本人の若者が、外国に移住していく流れのほうが強くなるでしょう。

※参考文献
・NHK, 『縮小ニッポンの衝撃』, 2018年5月20日

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