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孤独であることの害悪が明確になってきているが・・・では、どうするのか?

孤独であることの害悪が明確になってきているが・・・では、どうするのか?

社会的な孤立(孤独)が健康に悪いことは知られていたが・・・

これまでも、社会的な孤立(孤独)が健康に悪いことは知られていました。孤独は、喫煙や肥満よりも危険であるという研究成果まであります。こうした中、筑波大学が、より定量的な研究成果を発表しています。以下、朝日新聞の記事(2018年6月16日)より、一部引用します。

近所づきあいがないなど社会的つながりが弱い高齢者は、介護が必要になったり死亡したりするリスクが、そうでない人より約1・7倍高いとする調査結果を、筑波大などの研究チームがまとめた。京都市で開催中の日本老年医学会の学術集会で発表する。(中略)

社会的なつながりが弱い人の要介護・死亡リスクは、年齢や病気、服薬の影響などを考慮しても、4項目に全く当てはまらない場合に比べて、約1・7倍高かった。また、社会的なつながりが弱い人が、心身の活力が衰え弱々しくなった「フレイル」と呼ばれる状態だった場合、そのリスクは一層高まった。(後略)

「では、どうするのか(so what)」が難しい

孤独が問題であることは、ずっと以前から知られていました。健康に影響があることももちろんなのですが、孤独であることが人間の精神にとってよいはずもないわけです。そこで、多くの社会福祉にたずさわる人々が、社会にどんどん広がっていく孤独と戦ってきました。

しかし、人間というものは、放っておけば、親友の数を7年ごとに半減させる生き物です。どうしても高齢者ともなれば、親友と呼べるような人がいないという状態も当たり前になります。昔の職場とも、関係性が切れていることも普通です。

そうして、長いこと一人で暮らしてきた高齢者に「誰か友達を作ってください」とお願いしても、仕方がないでしょう。自分なりに生きてきた結果として、そして長い年月がそこに重なって、孤独があるのですから。それが自分で選択した結果としての孤独ではなく、多くが、他に選択するものがない中での孤独であることが問題なのです。

誰かが声をかけてあげればいいのか?

確かに「誰かが声をかけてあげる」ということは重要です。しかし、そうして孤独になってしまった高齢者には、かつて、誰も声をかけなかったというケースも少ないのです。ですから、今回のニュースのようなことがわかって「みんなで声をかけよう」という結論しか出ないのであれば、問題は解決しません。

専門的には、孤独になってしまった高齢者へのアプローチは、3つの段階を経て行われます。(1)対象者の発見(2)誘い出し(3)集団活動の場づくり、です。ここでもっとも困難なのが(2)の誘い出しなのです。孤独に苦しむ人をみつけても、その人に最適な場にまで誘い出すことが本当に難しいのです。

ここを認識しないままに対策を作ろうとすると、そのためのリソースの多くが「場作り」のほうに使われてしまいます。しかしある意味で、場というのは、すでに様々なものが存在しているのです。高齢者のためのクラブ活用やら、習い事教室やら、枚挙にいとまがありません。そこにさらに場ができても仕方がないケースも多いでしょう。

無理やり集団活動の場に引き出すとどうなるか

誘い出しのプロセスに十分なリソースを割かないで、無理やり、孤独になっている人を集団活動の場に引き出すのは、危険です。一人でいる孤独よりも、むしろ集団の中にいる孤独のほうが、精神的に負担となる人も少なくないからです。

しかし、このような認識がないままに、孤独の害悪ばかりが強調されるのは、少し怖いことです。結果として、少なからぬ高齢者が、無理やり集団活動の場に引き出され、かえって自信を無くして閉じこもる可能性もあると考えられるからです。

孤独が多くの人にとって害悪であることがわかったとしても、誘い出しに長けている社会福祉のプロが育成されない限り、この問題は解決しないでしょう。今後は、孤独の害悪のみならず、こうした誘い出しについての研究が進むことを願うばかりです。

※参考文献
・朝日新聞, 『社会的な孤立、要介護・死亡リスク1.7倍 筑波大研究』, 2018年6月16日

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