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自動車事故や行方不明者といったテーマで、認知症にまつわる社会問題が取り上げられることが増えてきました。こうした状況は、これからますます深刻になっていきます。実際、2025年には、認知症に苦しむ人は700万人にもなると予想されています。
実はこの700万人という数字は少なめに読んでいるもので認知症の一歩手前という軽度認知障害(MCI)の人まで入れると、1,300万人もの人が認知症に苦しむと考えられているのです。あと少しで、日本では10人に1人が、認知症を抱えることになるわけです。
認知症は、残念ながら、また治療法が確立されていない病気の症状です。フランスでは、アルツハイマー型の認知症の薬が医療保険の適用外となるなど、これまで使われてきた薬の効果にも疑問が多くあるようです。そうなると、認知症の人がいることを前提として、社会環境としてこの病気の症状を包含していく必要があるでしょう。
もちろん、認知症につながる病気の根本治療の研究が成果をあげることが保守本流であり大事です。同時に、現実を見れば認知症に苦しむ人が増える速度を落とすことも大切です。具体的には、認知症の予防に効果があることを見つけ出し、それを社会レベルで実践していくことが求められます。
現時点では、まず、社会的孤立が認知症につながることが指摘されています。家族や友人、地域社会など、社会的なつながりが多い高齢者は、認知症の発症リスクが46%低下するという研究結果があります。これは、非常に重要なことであり、対策も(簡単ではありませんが)考え付くことが可能でしょう。
また、日常的に口にする飲食物の中には、認知症の予防につながるものがあるとも考えられています。特に、ローズマリー、シソ、レモンバームといったシソ科の植物に含まれているロスマリン酸には、大きな期待が集まっています。
こうした中、また一つ、認知症の予防につながるかもしれない研究成果が発表されました。なんと、寝る時間によって、認知症の発症リスクが変わってくると言うのです。以下、朝日新聞の記事(2018年6月13日)より、一部引用します。
夜更かしする75歳以上は認知症のリスクが高まるとする調査結果を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)などの研究チームがまとめた。14日から京都市で始まる日本老年医学会で発表する。(中略)
認知症の発症リスクと就寝時刻の関係をみたところ、75歳未満では差がなかったが、75歳以上では、午後9~11時に寝る人に比べて、午後11時以降に寝る人は認知症の発症リスクが1・83倍高かった。(後略)
このニュースを受けて「なるほど、じゃあ早く寝よう」という対応ができるかというと、疑問もあります。というのも、人間の寝る時間については、遺伝子による要因が指摘されているからです。実際、人間の寝る時間をコントロールしている遺伝子(時計遺伝子)には個人差があることがわかっています。
もちろん、単に生活習慣として夜型になってしまっている人であれば、すぐにでも改めることで、認知症の発症リスクを下げられるでしょう。しかし、遺伝子によって先天的な夜型の人は、これを変えることは困難なはずです。
今後は、認知症の原因となっている病気の根本治療だけでなく、予防も重要になることは確実です。そうした予防についての研究成果も、こうして増えてきています。しかし当然ながら、そうした予防施策の効果には個人差も大きくあるはずで、中身は複雑化していく運命にありそうです。やはり、簡単ではありません。
※参考文献
・Yahoo!ニュース, 『アルツハイマー病治療薬・フランスで医療保険から外れる 変わる認知症治療の潮流とは』, 2018年6月5日
・朝日新聞, 『夜更かしの75歳以上、認知症リスク高まる 長寿医療研』, 2018年6月13日
・教えてGooウォッチ, 『朝型・夜型になる原因、遺伝子が関係していた!』, 2017年11月14日
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