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介護職の夜勤をともなう長時間労働が悪化している?

介護職の夜勤をともなう長時間労働が悪化している?

夜勤を必要とする職業は意外と多くあるが・・・

夜勤を必要とする職業は、意外と多くあります。特に、製造設備を遊ばせておくと無駄になってしまうメーカーなどでは、歴史的にも、夜勤を必要としてきました。いまでも、たとえば、半導体製造の現場は、24時間365日動いており、夜勤をする労働者によって、収益が支えられています。

ただし、こうした日本のメーカーは、夜勤をする労働者の生活や健康に配慮して、今では、1日を8時間ごとに区切り、3つのシフトを組んでいます。3つに区切るので、これを特に「三交代勤務」と言います。この「三交代勤務」が成立するまでは、夜勤をともなう長時間労働が発生していました。

しかし、いまもなお「三交代勤務」が採用されておらず、夜勤をともなう長時間労働が常態化している業界があります。介護業界です。しかもこれが改善されるどころか、悪化している可能性さえあるのです。以下、日本経済新聞の記事(2018年4月16日)より、一部引用します。

介護施設の約7割が、16時間以上勤務する2交代制の夜勤シフトを取り入れていることが16日、日本医療労働組合連合会(医労連)の調査で分かった。人手不足が深刻化するのに伴って、2交代制は増加する傾向にある。現場からは是正を求める声が高まっている。(中略)

介護施設の勤務は一般的に早番、日勤、夜勤の3交代制シフトと、夜勤が16時間前後の2交代制に分けられる。2交代制の夜勤は夕方ごろから翌朝まで交代なしで勤務する。本来は職員の負担を軽減するには3交代制が望ましいとされる。しかし実際に常時3交代制シフトを取っている施設はわずか9カ所(6%)にとどまった。

2交代制を取っている介護施設の職員1992人を対象に月平均の夜勤回数を調べたところ、4.5回以上の人が43%に上った。調査を開始した13年は29.8%で、年々増加傾向にある。(後略)

介護人材は、絶対に必要な社会インフラを支えている

介護人材がいなくなれば、死者が出ます。少しでも時間に穴が生まれてしまうと、それだけで、人命が失われてしまう可能性があるのが介護なのです。介護は、24時間365日の対応が求められる業界なのです。

そうした、直接的に人命に関わる責任の重い仕事なのに、不足する介護人材をボランティアでなんとかしようといった議論まで出はじめています。あんまりのことが多くて「どうして社会は介護業界にこれほど冷たいのか」と嘆きたくもなります。

しかしこれは、要介護者というのが、全人口の約5%程度(20人に1人)であり、社会的には(まだ)マイノリティーだというところに原因がありそうです。これから、要介護者の全人口に対する割合が増えてくると、社会的な認識も自然と高まってくるものと思われます。

とはいえ、そうした社会的な認識の向上を待っている余裕もありません。夜勤をともなう長時間労働が増えてきており、それでも待遇は(ほとんど)改善されないというのが現状なのです。これを放置していたら、介護業界の人材不足もまた、改善するどころか悪化するばかりでしょう。

介護業界の中でも、あきらめが広がっている

全員とは言いませんが、介護業界の中で会話をしていると「どうせ待遇は改善されない」といったあきらめが広がっているのを感じます。そして「介護の仕事にはやりがいを感じますが、そのうち別の業界に転職します」といった、悲しい決断に出会うことも少なくありません。

そこには「わかってもらえない」という絶望があるように思います。ただ、社会の側が理解を示さないのは、そもそも、要介護者というのが全体からすればまだ少数派だからという面もあるはずです。そして少しずつですが、社会の側の認識も上がってきています。

利用者やその家族は、介護は誰にでもできる仕事ではないことを経験から理解しているでしょう。利用者やその家族も、介護業界がより正しく社会に認識されるよう、声をあげていかなければならないと思います。メディア関係者であれば、利用者やその家族が、介護業界に対して感じているポジティブな面も報道していくべきでしょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『介護施設の長時間労働、7割が2交代制・夜勤16時間超』, 2018年4月16日

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