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日本の平均年齢は、現在、約47歳(中央値もほぼ同じ)です。世界でもっとも高齢化している国ですから、当然、受刑者もまた高齢者だったり、刑期中に高齢者になったりもします。なかなか比較は難しいのですが、日本の刑務所は、出所後のことまで考えたプログラム(のための予算)が不十分とされることも多いようです。
そうした中、受刑者の高齢化を重くみた刑務所が、限られた予算の中で、出所後のことを考えたプログラムを開始し、一定の効果をあげはじめているようです。以下、朝日新聞の記事(2018年3月18日)より、一部引用します。
年老いた受刑者の社会復帰を助ける試みが、全国の刑務所で始まっている。受刑者の健康を保ち、出所後の福祉サービスにつなぐ取り組みだ。(中略)高齢受刑者を中心にした社会復帰支援が高松刑務所で始まったのは、2012年。背景には刑法犯に占める高齢者の増加があった。
犯罪白書によると、刑法犯の認知件数は02年をピークに減少が続く。一方、検挙される65歳以上の高齢者の数は08年から高止まり、16年は4万6977人。1997年の3・7倍だ。高松刑務所では昨年末時点で760人が収容され、65歳以上は80人。最高齢は84歳だった。(中略)
刑務所の中にも人間関係があり、社会があります。規則正しい生活と仕事、娯楽もあります。もちろんこれは制限された社会であり、いずれは出所することを前提としているものです。ただ、刑務所を出所するということが高齢者に与える負の影響については映画『ショーシャンクの空に』を観たことがある人であれば想像できると思います。
出所すると、刑務所の中にあった人間関係が失われます。そうして孤独になってしまえば、人によっては「刑務所の中のほうがよかった」という感覚にもなりかねません。そうなると、刑務所に入ることを目的とした再犯も起こってしまいます。
高齢者にもなると、新たな人間関係の構築は困難になります。出所後に問題となる孤独も、放置していると、そのまま要介護者になってしまったり、すでに要介護者であれば悪化してしまいます。高齢化が進む日本では、やはり、出所後のありかたについて、関与することが必要なのです。
介護に関わっていると「どうして、こんなに複雑なんだ」とため息が出るものでしょう。背景を理解すると、そうして複雑なのも仕方のないことだと感じられたりもします。しかし、こうした複雑さが、本当に必要な人に、必要な分だけの社会福祉が届くことを妨げているとするなら問題です。
刑務所の中に入ることになってしまった人には、罪をつぐなう責任があります。同時に、そうした罪を犯すことを後押ししてしまった環境にもまた課題があることは明白でしょう。刑務所を出所してくる人が、二度と犯罪を犯さないようにサポートする環境は、誰にとってもメリットのあることだと思われます。
この具体的な形として、刑務所において、出所後に受けるべき福祉サービスについての教育を行うことは、理にかなっています。限られた予算の中で、刑務所としてやれることをしっかり検討し実行しているということは、素晴らしいことではないでしょうか。
※参考文献
・朝日新聞, 『塀の中、高齢者復帰支える 刑務所が本腰』, 2018年3月18日
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