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出生数ゼロ(子供が生まれない)自治体が出現しつつある

出生数ゼロ(子供が生まれない)自治体が出現しつつある

統計の残る1899年以降、最低の出生数

昨年2017年の1年間で生まれた子供は約94万人と推計されています。ショッキングなことに、これは、統計の残る1899年以降、最低の出生数ということになります。死亡した人は約134万人でしたから、およそ40万人の人口が日本から失われたことになります。

子供が生まれないので、当然のことなのですが、1年間を通して子供が1人も生まれないという「出生数ゼロ」という自治体が増えてきているようです。議員に立候補する人がいないため、議会を廃止しての直接民主制を検討したことで注目を集めた高知県大川村の場合も、ここ数年で何度か年間の「出生数ゼロ」を経験しています。

今後、止まらない少子化によって、こうした自治体が増えていくことは確実でしょう。まれに「少子化は改善できる」という主張を目にすることがありますが、そもそも人間には子供を産める年齢に生物学的な限界があります。その限界線を、人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代が突破してしまった今、こうした主張には説得力がありません。

賦課方式(ふかほうしき)という日本の高齢者政策

日本は「賦課方式(ふかほうしき)」と呼ばれる高齢者政策をとってきました。これは、若者が高齢者を支えるという制度であり、高齢者よりも若者のほうが人数が多い状態を前提として設計されているのです。この制度は「出生数ゼロ」では(外部から多数の若者が移住してこない限り)絶対に維持できません。

そもそも「出生数ゼロ」となりつつある自治体は、外部からの若者の誘致に失敗してきた自治体です。同じ顔ぶれで、いつも和気藹々でいられることは、短期的には心地のよいものかもしれません。しかしそれは、長期的には、その自治体で暮らしてきた人々の恐ろしい晩年として結実してしまうのです。

残念ですが、そうした自治体が経験することになる悲惨は、その自治体を導いてきたリーダーたちの責任です。企業であれば、株主から経営責任が問われるところです。しかし自治体のリーダーには、株主の存在のような、厳しい外部からの目線がありません。

自治体の未来は日本の未来でもある

そして、自治体が直面しつつあるこうした悲惨は、当然、日本そのものの未来でもあります。日本が「出生数ゼロ」になることはないでしょうが、程度の問題であって、本質的には同じことが起こります。可能性としては、外国人が大量に移住してくることか、理解しがたい出生数の急速な回復がなければ、これは避けられません。

言うまでもなく、日本の自治体には、それぞれに魅力があり、可能性もあります。ただ1点、子供を産み育てると決めた人に優しい環境がなければ、いかに魅力や可能性があったとしても、すべてが無駄になってしまいます。

子供が減るということは、未来が減るということです。そして「出生数ゼロ」ということは、未来がないということでもあります。もちろん「そんなことはわかっている」と感じる人も多いと思います。ただ、わかっていたとしても、具体的な行動がともなわなければ、結果は悲惨になります。

※参考文献
・ビジネス+IT, 『いよいよ「出生数ゼロ」自治体が各地に、遅きに失した少子化対策の末路』, 2018年1月29日
・ZUU online, 『「1年半も出生ゼロ」京都府笠置町が生き残りかけ「まちづくり会社」設立へ』, 2016年6月25日

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