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有効求人倍率とは、1人の労働者に対して、何名分の求人があるのかを示した数字です。昨年の全国平均は1.22倍であり、これは1人の労働者に対して、求人が1.22あるということを示しています。
この全国平均に対して、介護業界の有効求人倍率は3.15倍でした。これだけでも、介護業界がいかに人材不足の状態にあるかがわかります。しかし、この3.15倍という数字をそのまま読んでしまうと、大切な視点を見失います。それは、介護業界の有効求人倍率は、地域によって大きく異なるということです。
特に恐ろしいのは、東京都(5.40倍)と愛知県(5.30倍)です。東京都と愛知県では、1人の労働者をめぐって、5つ以上の求人があるということです。ここから、人材不足からあるべき介護が提供できていない介護事業者が多いことがわかります。以下、厚生労働省の資料(2017年8月23日)より、グラフを引用します。
介護事業者の売上は、法律で、介護サービスごとに決まっています。この財源は、介護保険料と税金です。介護事業者の利益は、この売上から、人件費と地代家賃を引いたものになります。ここに、大きな問題が隠れています。
都市部においては、まず、人件費が高いのです。そしてさらに、都市部の地代家賃が高いことも周知の事実です。そうなると、都市部における介護事業者は儲からないということになります。同じ介護事業を展開するのなら、人件費と地代家賃の安い地方のほうがよいということにもなるでしょう。
こうした背景から、そもそも、都市部には介護施設が足りていないのです。ただでさえ足りないのに、さらに、東京都と愛知県は人材不足に陥っています。人材不足のところでは、当然、採用のためのコストが上がりますから、ますます儲からないという結果になるわけです。
都市部と地方では、介護サービスを提供するためのコスト、特に人件費と地代家賃が異なります。この違いを埋めてあげないと、介護事業者は、都市部から出ていってしまうでしょう。これにともなって、介護が必要な高齢者もまた、都市部から出て行かざるを得なくなります。
これは、考え方にょっては、都市部への人口集中が避けられるとも言えます。しかし所得税を支払う労働力にならない、介護のために支出が必要な高齢者が増えると、財政が破綻してしまいます。こうした形での人口の回復は、求められていないはずなのです。
この状態を少しでも緩和するには、介護事業者に対して、営業する地域の物価を加味した報酬(物価スライド制)を導入する必要があるかもしれません。さもないと、都市部における介護が壊滅することになってしまうからです。
たしかに、現在の介護保険法でも、地域を1級地から7級地、その他と8区分し、人件費の格差を調整しようとはしています。ただこれは、国家公務員の人件費率を根拠としており、地域間の地価の格差や物品購入における物価の格差は考慮されてはいません。
これからの都市部の介護を考えて行くためには、公務員ではなく民間の待遇と求人倍率を参照しつつ、さらに地価や物価も考慮するなど、もう一段進んだ地域間の調整が必要になってくるでしょう。
※参考文献
・厚生労働省, 『介護人材確保対策(参考資料)』, 社会保障審議会, 第145回, 2017年8月23日
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