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認知症は、介護をする家族の負担を大きくするだけでなく、国家の社会福祉財源を直撃する大きな問題です。日本では、2025年には700万人の人が認知症に苦しむと考えられており、認知症手前の軽度認知障害(MCI)まで含めると1,300万人にもなると予想されています。
よく誤解されるのですが、認知症というのは、病気の名前ではなくて、症状の名前です。認知症の背景には、その原因となる病気が多数報告されています。その中でもアルツハイマー病という脳の病気が、認知症の6割以上を占めていると考えられています。
認知症=アルツハイマー病ということにはならないものの、とにかく、アルツハイマー病の根絶は、高齢化社会に突入する人類にとって、大きな課題であることは間違いありません。当然、製薬会社をはじめとした多数の研究機関が、アルツハイマー病の研究を続けてきています。
最近、アルツハイマー病の治療薬として期待を集めていたアミロイドβ仮説が否定されてしまいました(アミロイドβがアルツハイマー病の原因であるという仮説)。まだ100%否定されたわけではなく、予防には役立つ可能性が残されていますが、製薬会社の多くは、この仮説から撤退しつつあるようです。
とにかく、この仮説が崩れると、また、アルツハイマー病の治療は、暗礁に乗り上げることになります。アミロイドβを削減する新薬の臨床試験が失敗に終わり、介護業界が落胆する中、新たなニュースが舞い込んできました。以下、Newsweekの記事(2018年1月20日)より、一部引用します。
1月初め、学術誌ブレインリサーチに発表された今回の研究で、英ランカスター大学のチームは糖尿病治療薬がアルツハイマー病のマウスに効果を発揮するかを試した。アルツハイマー病に関連する遺伝子を発現するよう操作したマウスの加齢を待ち、病気が進行して脳機能に障害が現れてから実験を開始した。
研究チームはその状態のマウスに、「トリプルアゴニスト」と呼ばれる糖尿病治療薬を投与。その後、記憶力や学習能力を検証するための迷路実験を行った。
すると、アルツハイマー病の症状を見せていた高齢マウスは投薬後、学習能力や記憶力が改善。生物学的レベルでも明らかな結果が出た。アルツハイマー病に特徴的な、タンパク質「アミロイドβ」の脳内の蓄積が減少していたのだ。加えて、脳神経細胞の消失は全体的にゆっくりになり、保護作用は高まった。
そもそも、糖尿病の人は、アルツハイマー病の発症リスクが2~4倍に上昇するという研究結果があります(糖尿病ネットワーク, 2016年)。血糖値が高いと、脳の神経細胞が障害を受けることも知られており、アルツハイマー病と糖尿病の関係性は以前から疑われてきたのです。
今回のニュースから、糖尿病を予防することが、アルツハイマー病の予防にもなるという話で止まらない可能性が濃厚になってきました。糖尿病の治療薬が、アルツハイマー病の治療薬としての機能も果たすかもしれないからです。
もちろん、先のアミロイドβ仮説のように、強く信じられてきた仮説であっても、最終的には崩れてしまうこともあります。ただ、専門の研究者意外の人間は、こうした研究の成果を待っているしかありません。なんとか、研究者の皆様には、頑張ってもらいたいです。
※参考文献
・Newsweek, 『アルツハイマー病に効く? 意外な薬』, 2018年1月20日
・糖尿病ネットワーク, 『糖尿病と認知症の「危険な関係」 血糖値が高いと認知症リスクが上昇』, 2016年6月13日
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