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高齢者のテレビ視聴に関しては、NHKが論文(2010年)を出しています。そこから、以下、キモとなる発見を引用してみます。
高齢者は年齢が上がるほどテレビ視聴が増え,70 代になると起床時間の 3 分の 1 程度をテレビ視聴に費やしているのが実態である。それでは高齢者はなぜテレビを長時間視聴するのか。高齢者は「時間があるから」と答えるが,それは長時間視聴を可能にする条件でしかない。
そこでその背景を分析してみると,生活への沈滞感を紛らわすような気持ちがテレビへ向かわせる面が否めないながら,良好な満足感や安心感が背景にあるような長時間視聴も同程度に行われていることが分かった。
また,ヒアリングでは,多くの高齢者がテレビをもっと見たいと思っていたわけではないのに,自由時間が増える中ではっきりした意識を持たないまま視聴量が増え,いつの間にかそれが当たり前になっていた,といった様子が聞かれた。
要介護者の多くにとって、テレビはとても大切です(もちろん、テレビを見ない人もたくさんいらっしゃいますが)。テレビには、おなじ時間帯に、おなじ番組を見ている人がいるという連帯感(社会とのつながり)を生み出す効果が指摘されることもあります。これにより、すこしは「寂しさ」をまぎらわすことができるようです。
しかし、老化とともに目が見えなくなり、耳も聞こえなくなっていくのは自然なことです。テレビを見ていても、ついていけなくなる時が、多くの要介護者に訪れてしまいます。ボヤけて見える孫の写真を握りしめ、静かな部屋でじっとしているしかない要介護者は、今この瞬間にもたくさんいらっしゃいます。
少しでも長い間、テレビを楽しめるようにするためにも、目と耳の老化と戦うことは、とても大事なのです。同時に、テレビにばかり頼るようなありかたにも問題があります。
高齢者にとってほんとうに重要なのは、テレビではなくて、人生の楽しみです。それは、子供や孫の成長だったり、社会とつながっているという実感です。
要介護者に趣味があり、そうした趣味のサークルなどに関わることに喜びを感じてもらえたら最高です。同時に、要介護者には、介護者やその家族とのコミュニケーションが必要です。
SNSなどを活用すれば、介護者にとって、要介護者とのコミュニケーションはそれほど負担にはなりません。この小さな心がけが、要介護者のテレビ依存性を下げ、結果として、介護の負担を大きく軽減させる可能性があるということを、私たちは理解しておく必要があるでしょう。
※参考文献
・齋藤建作, 『高齢者とテレビ』, NHK放送文化研究所(2010年)
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