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これまで、日本の義務教育(小学校6年間・中学校3年間)では「介護」が教えられてはいませんでした。しかしこの状況は、今年の3月に変化しています。以下、中学校の学習指導要領(2017年3月)より「介護」に関連する記述を引用します。
家庭生活は地域との相互の関わりで成り立っていることが分かり,高齢者など地域の人々と協働する必要があることや介護など高齢者との関わり方について理解すること。(A家族・家庭生活/(3)ア(イ))高高齢者の身体の特徴についても触れること。また,高齢者の介護の基礎に関する体験的な活動ができるよう留意すること。(C消費生活・環境/3(2)エ)
学習指導要領とは、文部科学省が定める各学校におけるカリキュラム編成の基準です。ここに記述が入れば、基本的には、その内容が学校で教えられることになっています。ですから、こうして「介護」が中学校の学習指導要領に導入されることは、これから、中学校で「介護」の授業が行われることを意味しています。
こうして中学校で「介護」が教えられるようになると、将来の就職先として「介護」を考える学生も出てくるでしょう。2025年には38万人が不足すると言われている介護業界の人材難にとっては、こうして学習指導要領に「介護」が入ることは良いニュースかもしれません。
しかし、社会全体からみたとき、いまのまま、そうして「介護」の世界の労働力が確保されてしまうことには課題もあります。仮にこの結果として待遇の悪い介護業界で働く人が増えると、税収が減ってしまい、結果としてまた、社会福祉のための財源が痛んでしまうからです。
難しい課題ですが、順番としては、まず、介護業界の待遇を改善する必要があるのです。これが間に合わないままに、人材の数だけが確保されてしまうと、かえって厳しいことにもなりかねません。
とはいうものの、義務教育において「介護」が教えられるようになっていくこと自体は素晴らしいことです。誰もが「介護」に関わることになる未来はすぐそこまで来ています。そして「介護」は誰もが関わることだからこそ、義務教育においてそれが教育される必要性もあるのです。
それがそのまま、待遇の改善されない業界への人材投入になってしまうことは避けないとなりません。繰り返しになりますが、その前に、介護業界の待遇の改善が必要です。しかし「介護」についての理解を深め、その意義や社会的役割について知っている人が増えることは、どうしても必要なことです。
介護職(介護のプロ)の存在により介護離職が抑えられ、それによって社会福祉のための財源が確保され、結果として介護職の待遇もまた上がっていくような、そうした流れが生まれることを期待します。いまはまだ夢物語ですが、社会的な夢を実現させることが教育の役割でしょう。
※参考文献
・文部科学省, 『中学校学習指導要領』, 2017年3月
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