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高齢者は自然災害の犠牲者になりやすい?早期避難の実現に向けて

高齢者は自然災害の犠牲者になりやすい?早期避難の実現に向けて

自然災害の犠牲者となる高齢者

ここ最近は、自然災害の規模が大きくなったと感じる人も多いでしょう。ちょっとした雨かと思ったら、大きな災害につながったというニュースも増えてきました。実際に、地球環境の変化によって災害の規模が大きくなっているという面もあるでしょう。

同時に、高齢化によって、過去にはちょっとした災害とみなされたようなレベルの災害でも、犠牲になってしまう高齢者が生まれてしまうという見方も重要です。以下、Yahoo!ニュースの記事(2017年9月21日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

近年、自然災害が頻発していますが、その拡大要因としては、地球規模の環境変化、都市化および高齢化の進展があげられます。わが国では、現在、高齢化率が25%を超え、2050年には40%に達すると予測されていて、高齢化社会における災害対策のあり方が喫緊の課題となっています。(中略)

いずれの自然災害においても60代以上の犠牲者が大半を占めています。阪神・淡路大震災では建物倒壊による被災、東日本大震災では津波による被災、ハリケーンサンディでは高潮による被災であり、被災原因は異なりますが高齢者の被災割合は高く、高齢者避難の重要性が再確認されます。(中略)

加齢に伴う動作速度や体力の低下への配慮、高齢者のみによる共助体制など、高齢者の避難について、多く問題が山積しています。さらに、降雨が短時間に集中するという環境変化がもたらす安全避難に必要な時間(リードタイム)の減少についても考慮が必要です。

高齢者を含めた減災対策として、住民と行政機関(市町村、県、国)のそれぞれが持っている災害情報の共有化(地域情報、水害経験、浸水シミュレーション結果等)が必要であり、「いつ、だれが、どこで、何をするか」という個々のタイムラインの確立が不可欠です。(後略)

防災の要は早期避難である

いつの時代も、自然災害においては、自然そのものをコントロールしようとするのではなく、早期避難こそ防災の要になります。そうした早期避難においては、過去の災害の経験から判断するのではなく、過去とは比較にならない、想定外となることも前提としなければなりません。

ここで、どうしても考えなければならないのは、介護を必要とする高齢者(要介護者)のことです。介護を必要としない高齢者の避難よりもずっと避難のために時間がかかることは明白です。そうなると、早期退避の早期というのは、どれほどの早期であれば十分なのかという疑問が出てきます。

実質的には、要介護者の早期避難を実行するのは、現場の介護職でしょう。では、現場の介護職が、早期避難の訓練を受けているかというと、かなりの色むらがあります。介護事業者によっては、しっかりとした訓練ができているところもあれば、そのような余裕のない介護事業者も多いからです。

また、台風のように、その発生から到達までに、それなりに避難の時間がある場合は、まだなんとかなるかもしれません。しかし、震災からの津波のように、発生から避難までの時間が命取りになるような災害の場合は、かなり難しい問題が出てきます。

とにかく正常性バイアスには注意したい

人間には、自分に都合の悪いことは無視したり、過小評価するという傾向(正常性バイアス)があります。簡単に言えば、私たちは、正しい根拠がなくても「自分だけは大丈夫」と考えてしまうことが多いのです。

この正常性バイアスは、新しいことにチャレンジしたりする場合は、有効に働きます。石橋を叩いて壊してしまうような態度では、なにも成し遂げることはできないでしょう。ただ、こと自然災害における早期避難については、危険な方向に働く可能性が高くなります。

まずは、災害に際しては、TVやラジオ、ネットなど、できる限り正しく素早い情報をもつことが大事です。そうした情報を得た上で、正常性バイアスに注意して危機レベルを判断し、少しでも懸念があれば、避難行動に入るようにしましょう。

これを徹底していくと、避難の空振りも増えると思います。しかし、空振りをしているということは、むしろ正しい避難ができている証拠でもあります。本当に危機的な状況になったときにも避難に成功するのは、こうした空振りを多数経験してきた人だからです。

※参考文献
・Yahoo!ニュース, 『高齢化時代の水害被害をみると・・・』, 2017年9月21日

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