KAIGOLABの最新情報をお届けします。
介護保険は、日本に暮らす40歳以上の人であれば、強制的に加入させられる保険です。保険ですから、それが必要になれば、加入している人であれば、誰もが使えるものでなければなりません。そうでないと、そもそも保険になりません。
自動車保険に加入していれば、いざ、運転事故を起こしてしまった場合には、保険を取り扱っている業者に連絡をして、保険に加入したときの契約を履行してもらうでしょう。これと同じように、介護が必要になれば、介護保険に加入している40歳以上の人であれば誰もが公的な介護サービスを使えるのです。
そうして、実際に介護保険を活用した人が、昨年度は約614万人であることが、先月末に厚生労働省より発表されています。以下、翔泳社が運営する投資系メデュア、マネージンの記事(2017年9月16日)より、一部引用します。
(前略)平成28年度の年間実受給者数は前年度比1.4%増の613万8,100人で、そのうち介護サービスが同2.8%増の497万5,500人、介護予防サービスが同3.8%減の150万100人だった。
同時に公表された平成29年4月審査分の受給者1人当たりの費用額は16万400円で、前年同月から3,300円増加した。内訳をみると、介護サービスが19万1,200円で同300円増加、介護予防サービスが3万5,100円で同1,500円減少した。(後略)
約614万人という数は、日本の人口である約1.27億人における約5%に相当します。約20人に1人が介護保険を利用している計算になります。この数字を大きいと見るか、小さいと見るかによって、介護保険に対する考え方は変わってくるでしょう。
約614万人(全人口の約5%)という数字は、あくまでも介護を必要としている人の数です。しかし、実際の影響を考えるためには、介護を受けている人だけでなく、介護をする家族のことも想像する必要があるでしょう。日本の世帯平均人数である約2.5人であることから、介護に関係する人という意味では、約5%の約2.5倍として、約12.5%になります。このように考えると、介護に苦しんでいる人というのは、日本で暮らす人の約8人に1人という計算になります。これに、介護業界で働く人の総数になる約200万人(人口の約1.6%)を足せば、介護に関わっている人は全人口の約14%(約7人に1人)にもなります。今後、この数字はますます厳しい方向に向かうことは明らかですから、まさに大介護時代であることを示すのに十分な証拠です。
介護を必要とする人が約614万人(全人口の約5%)というのは、子供(0〜14歳)の総数である約1,617万人(約12.7%)よりはずっと小さな数字です。仮に、介護を必要とする人だけでなく、介護をする家族まで含めても約12.5%です。そこになんとか、介護業界まで入れても、やっと約14%にすぎません。民主主義社会においては、多数決になればとても勝てない数字であり、介護に関わる人というのは、社会的なマイノリティーということになります。日本で暮らす約86%の人々にとっては、介護は他人事なのです。昨年度の日本における非正規労働者の総数が約2,023万人(人口の約16%)であることを考えると、民主主義社会である日本においては、介護よりもむしろ、非正規労働者の問題のほうが大きいとさえ考えられます。
何らかの形で介護に関わる人々(全人口の約14%)は、自分たちの置かれている環境を改善するには、介護とは(まだ)関係ない約84%の人々を説得していく必要があるという事実を直視する必要があります。いかに介護が大変でも、その大変さに触れているのは、多く見積もっても、せいぜい(まだ)約7人に1人程度なのです。
特に日本の介護は、そのほとんどすべてが事実上の税金(強制的に加入させられる介護保険も税金の一種)で成立しています。ですから、介護の環境を改善するには、税金の使い方を変えるしかないわけです。税金の使い方としては、まずは、マジョリティーにとって有益になることが優先されるのは、民主主義においては当然のことになります。
今のところは、約84%の人々にとって関係のないことに使われる税金の使い道として介護を選んでもらうのは、簡単なことではありません。簡単なことではないと言うよりもむしろ、あまり成功事例のないことです。介護に関わる人は、そうした意識をもって、社会に向けて介護の重要性を発信していかないとならないでしょう。
※参考文献
・マネージン, 『介護給付費等の受給者は613万人に ロボットスーツなどの支援機器市場は急拡大へ』, 2017年9月16日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。