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香港の夜景写真
日本の高齢者市場が大きくなってきていることは、誰もが知っていることです。しかし、中国でも、この傾向に拍車がかかりつつあることは、なんとなく感じているだけかもしれません。その具体的な規模に関するレポートが出されました。以下、ZUU onlineの記事(2017年8月7日)より、一部引用してみます。
中国の2010年における65歳以上人口は、1億1000万人で総人口の8.8%であった。予測では2025年、2億人(14%)2050年には3億3000万人(25%)と予測されている。一人っ子政策の影響で、高齢者を看護する人手は不足している。ネットニュース「今日頭条」が高齢者問題の特集を掲載した。(中略)
中国は「変老」つまり高齢社会に変わりつつある。それも新中国初代の“富裕”高齢者である。彼らの多くは不動産と金融資産を持って退職する。また88%の高齢者が年金に加入している。2014年の都市高齢者家庭の平均月収は7350元である。そのうち消費支出は45%、これは2010年比5割増になった。市場における高齢者の比重は増す一方だ。
国家社会科学基金の作成した“養老消費と養老産業の発展研究”の予測では、2015年の中国高齢者市場規模は1兆8700億元、そのうち医療を除く養老産業規模は4900億元である。これが2050年には高齢者市場規模は48兆5200億元、養老産業規模は21兆9500億元、1年間の増加率はそれぞれ9.74%、11,48%の“高速発展”を予測している。
ここで、48.5兆元というのは、およそ800兆円です(1元=16.5円換算)。2025年には、日本の高齢者市場は100兆円にまで到達すると予測されています。中国の場合は、2050年時点の話ではありますが、この8倍にまで膨れ上がるというのです。
日本でも、介護業界の人手不足は問題になっています。しかし、一人っ子政策をとってきた中国では、人手不足の影響はさらに深刻なものになっていくようです。一人っ子政策は、1979〜2015年の期間にとられた、子供を1人しか作れないという政策です。
これからの中国では、一人っ子政策の前、すなわち1979年以前に生まれた人が高齢者になっていきます。当然、その人口を支えきれるだけの若手の労働力が足りなくなる可能性が高いでしょう。これは本当は、日本の介護事業者からするとチャンスなのです。
しかし日本では、そもそも国内の介護人材でさえまかないきれず、海外から介護労働力を輸入しようとしています。そうした環境だと、中国市場におけるチャンスは、欧米などの企業によってシェアを奪われてしまうでしょう。日本は、国内だけを見ているうちに、海外勢にやられてしまいかねない状況とも言えます。
とはいえ、中国でビジネスを成功させるのは極端に難しいというのも事実です。中国はチャンスということで中国市場に参入した企業は、業界に関わらず、成功しているのはほんの一握りというのが実情になります。マクロには中国が成長しているのは確実なのですが、ミクロにはどうにも成功が見えないイメージです。
少ないながらも、中国で成功したケースを観察していると、結局のところ、どこまで文化の違いに配慮できたかどうかが大事ということがわかります。とにかく、日本とは勝手が違うことを認識し、JETRO(日本貿易振興機構)の中国ページなどを細かく読み込むことが最低限必要になります。
ここで、どこの日本企業でも困っているのは、中国における(1)労働者の賃金上昇率が高いこと(2)労働者の離職率が高いこと(3)すこしうまくいくとコピーで溢れてしまうこと(4)日本の品質意識がなかなか浸透しないこと(5)現地の信頼できるパートナー企業がなかなか見つからないこと、といったあたりです。
また、中国においては、日本企業に勤務することは、ブランド的によいとは考えられていません。これにより採用もまた困難です。中国における外資と言えば、やはり、欧米系のほうがずっと人気があります。その原因の一つは、欧米系の人事制度は優秀であれば青天井なのに対して、日本のそれは、横並び主義的だからとも言われます。
とはいうものの、いかに中国で成功することが難しいことであったとしても、そこに800兆円という巨大な市場があれば、誰かがその開拓に成功するでしょう。その成功の中に、ぜひ、日本企業も入っていてもらいたいものです。
※参考文献
・ZUU online, 『中国の高齢者市場は50兆元(820兆円)になる?』, 2017年8月7日
・みずほコーボレート銀行/産業調査部, 『高齢者向け市場 〜来たるべき「2025年」に向けての取り組みが求められる〜』
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