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認知症による行方不明者が増えています。背景には、認知症に対する社会的な認識の高まりもあります。実際に、これまで原因不明だった行方不明に、認知症という原因が与えられたということもあるでしょう。しかし、認知症そのものが増え、それがいわゆる「徘徊」につながっていることも原因のはずです。
認知症は(今のところ)完治しない、脳内の病気を背景とした症状です。病気を背景としているので、こうした病気自体を撲滅するという動きがあります。同時に、認知症そのものを悪とするのではなく、人間に起こりうることの一つとして、共に生きていくという覚悟も求められてきています。
実際に、認知症に苦しんでいる人やその家族からすれば、認知症そのものを恨んでも、どこにも行き着かない話なのです。であるならば、認知症によって生まれてしまう様々な負担を、社会全体で、少しでも分散させていくことが鍵になってきます。以下、日経新聞の記事(2017年6月15日)より、一部引用します。
認知症が原因で行方が分からなくなったとして、2016年に全国の警察に届け出があった行方不明者は前年比26.4%増の1万5432人だったことが15日、警察庁のまとめで分かった。12年の統計開始から4年連続で増え、過去最多を更新し続けている。(中略)
15年以前に届け出を受けた73人を含め、16年に所在が確認された不明者は計1万5314人。警察の捜索活動や通報で発見されたケースが63.7%と最も多く、不明者の自力帰宅や家族による発見は32.3%だった。3.1%に当たる471人は死亡した状態で見つかった。(中略)
警察庁の担当者は認知症高齢者に関する届け出数の増加について「社会全体として認知症への関心が高まっていることが背景にあるかもしれない」とし、「冬場は凍死などの恐れもある。自治体などと連携して、素早い立ち上がりを徹底したい」と強調した。
認知症になっても、長期的な記憶は保存されています。そのため、定年退職をしていても、現役時代に勤務していた会社に出社しようとしたりします。また、すでに子供は成人しているのに、子供が子供だったころの記憶によって、幼稚園にお迎えに行ったりもします。
認知症に悩まされている人が、行方不明になってしまう背景にあるのは、責任感だったり、子供への愛情だったりするわけです。そうした、人間にとって大事な感情が、結果として行方不明につながっているとするなら、行方不明になってしまうこと自体をゼロにすることは困難です。
であれば、そうして行方不明になってしまったら、すぐに見つかる、見つけられるようにしていくことが大事になってきます。もちろん、GPSを携帯してもらうようにするといったテクノロジーによる解決もあるでしょう。しかし、それ以上に重要なのは、迷っているように見える高齢者を見つけたら、誰かが声をかけるような社会の実現です。
そこで迷っている高齢者のことを、必死で探している家族や介護職がいます。多少面倒に感じても、声をかけてみて、認知症が疑われるのであれば、地元の警察につなぐような行動に慣れている社会を構築していきたいものですね。
※参考文献
・日本経済新聞, 『認知症で行方不明1万5000人 16年、4年連続最多』, 2017年6月15日
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