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世界中の国々、特に先進国においては、少子高齢化が進んでいます。こうした、一定期間内における年齢別の人口分布や総人口の変化を特に人口動態(じんこうどうたい)と言います。この人口動態が、日本において、とくに顕著に変化しつつある(もっとも高齢化が進んでいる)ことは、周知の通りです。
急速な高齢化というのは、人類史上、過去に類をみないものです。ですので、今起こっている人口動態の変化が、具体的に社会にどのような影響を与えるのかも不明です。ただ、少なくとも、各国において、医療や介護の問題が大きくなり、そのハンドリングが困難になるということは、自明のこととして理解されてきました。
高齢化が進むということは、若者が減るということでもあります。その影響もまた、今のところははっきりとしたことは言えない段階にあります。しかし、今から70年ほど前の1949年には、イギリスにおいて、次のような警告が発せられていることは、知っておいてよいでしょう。
若者人口が減少している社会においては、技術や経済厚生だけでなく、知的な活動や芸術面の停滞が生ずることよって、社会が危険なまでに進歩しなくなることが起こり得ると予想される。
イギリス『王立人口問題委員会報告』(1949年)
これから日本で起こることを簡単に言うと、とにかく「現在のような(贅沢な)状態は維持できない」ということにつきます。あらゆる社会福祉の財源は枯渇します。そのため、極端には(ほとんど)すべての社会福祉を、無償のボランティアに依存しなければならない状態にもなりえます(無償のボランティアが確保できるとした場合)。
増税は当たり前に起こるでしょう。医療費や介護費における自己負担の割合は、確実に上がっていきます。生活保護の金額は、極限まで下げられていきます。エネルギーや食料は、世界的に不足していきますから、生活費は上がっていきます。この上に、人工知能が仕事を奪うような世界が出現します。
「こんなの、無理」という状態が、現実にやってきます。実は、すでに「こんなの、無理」という状態は、存在しています。ただ、そうした状態にある人は(まだ)マイノリティーなだけのことです。これからの日本では、それがマジョリティーになっていくという話です。ここまでのシナリオは、ほぼ規定路線です。
大きなチャンスは、過去には、ありました。それは、人口ボリュームの大きな団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれの世代)が、子供をより多く産むということでした。これによって若者の数を確保し、その若者が労働力となり、納税してくれる未来がつくれたら、先のような悲惨は回避できたかもしれないのです。
しかし、団塊ジュニア世代は、40歳前半という出産適齢期のボーダーラインを越えようとしています。科学的にも、子供ができにくい年代になってしまっているため、団塊ジュニア世代が、より多くの子供を産むのは、もはや不可能という時代に突入しています。このチャンスの扉は、すでに閉じてしまっているのです。
自民党の小泉進次郎氏は、このところ「こども保険」を提唱しています。この「こども保険」とは、社会保険料を上げ、そこから育児・教育の費用を無償化するという提案です。これは奇策ではなく、大学まで無償というヨーロッパでは当たり前の上策です。しかし、団塊ジュニア世代が出産適齢期を超えてしまった今、これだけでは手遅れです。
最後の希望は、先に示したイギリス王立人口問題委員会報告の予言が間違っているという偶然だけです。この予言が間違っていたら、技術、経済、芸術といった国家の根幹をつくる活動が、若者がいない社会でも停滞しないことになります。
人工知能が仕事を奪うという逆流にさからって、高齢者が次々と起業をして、新たな雇用を生み出すような社会が必要です。雇われる人を増やすのではなく、雇う人を増やしていかないとなりません。それを、若者に頼るのではなく、高齢者が自ら行っていくことが求められます。
これが無理というとき、日本は、かなりの貧困国になってしまうでしょう。そして若者は、そこまでの未来を規定路線としつつ、国外への退去をはじめています。実際に、トップレベルの高校生は、すでに、日本の大学への進学を見限りはじめています。日本は沈んでも、世界はまだ浮き上がる国があるからです。
※参考文献
・IMF, 『人口動態の変化は世界経済にどのような影響を及ぼすか(仮訳)』, 2004年
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