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混合介護とは、介護が必要な利用者(要介護者)に対して、介護保険内サービス(自己負担1〜2割)と、保険外サービス(全額自己負担)を同時に提供するというものです。混合介護によって、介護事業者は、お金の支払い能力のある利用者に対して、より高品質なサービスを、より高額に提供できるようになります。
これまでの介護事業者の売上は、そのほとんどが、介護保険から支払われるものでした。しかし、介護保険の財源は枯渇しつつあります。そのため、法改正のたびに、介護事業者に支払われるサービス料金が減らされ続けてきたのです。結果として、少なからぬ介護事業者は、倒産の危機にあります。
混合介護が進まないと、そもそも国に財源がないのですから、介護事業者の収益は改善しません。すると当然、介護職の待遇も改善しないということになります。手取りで20万円を切るような介護職が多数いる現在、これは本当に大問題なのです。
介護の仕事は、人間の生命と尊厳に直結する非常に高度なものです。厳しい夜勤などもあります。それだけ大変な仕事なのに、ひどい待遇でも頑張っている介護職が多いのは、介護の仕事には「やりがい」があるからです。
しかし、こうした「やりがい」につけこんで、不当な対価を推し進めるのは「やりがい搾取」です。そして、介護職に対して「やりがい搾取」を押し付けているのは、日本という国家なのです。私たちは、その自覚を持たないとなりません。
介護職の待遇改善のためにも、混合介護を進める以外の方法は残されていません。国の財源となる税収が極端に改善すれば話は別です。しかし、仮にそうしたラッキーなことがあったとしても、日本には、介護以外にも山積する社会問題があります。国に頼っている限り、ジリ貧の未来は見えているのです。
国に頼れないのであれば、自分たちで商品開発をし、混合介護を進めることで収益を改善していくしか手がありません。しかし、そうした認識は広く共有されているはずなのに、混合介護に待ったがかかりました。以下、日経新聞の記事(2017年5月19日)より、一部を引用します。
政府の規制改革推進会議は、介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」の拡大を先送りする。当初は混合介護の事業者向けのガイドライン(指針)を年内に作るよう厚生労働省に求めていた。23日に公表する答申では「2018年度上期」に「ルール整理」するとあいまいな表現に後退した。年内の指針策定は難しく、混合介護の拡大は遅れる。
厚労省や与党から「高所得者ばかりが恩恵を受ける不平等につながりかねない」などと慎重意見が相次いだため。答申は23日に安倍晋三首相に提出する。政府は答申に基づき実施計画をつくり、6月にまとめる成長戦略に反映させる。
介護保険のサービスは原則1~2割の負担で利用できる。現在も保険サービスの前後に、明確に時間を区切って保険外サービスを提供することは可能だ。だが訪問介護で高齢者に食事をつくる際、同居家族の分も調理するなど同時・一体的なサービス提供はできない。(後略)
混合介護が解禁となると、介護事業者の多くは、保険外のサービスまで購入できる、お金を持っている高齢者に群がるようになります。逆に、お金のない高齢者は、保険内のサービスしか使えないので、介護事業者にとっては赤字でのサービス提供にもなりやすいわけです。
介護業界は人手不足です。こうした状態で混合介護が可能になると、保険内サービスだけしか発注できない高齢者のところには、そもそも介護職が行かないということにもなりかねません。慎重派の意見は、このようにして、介護難民が増加してしまうことを懸念しているのです。
しかし、この人手不足の根本原因は、待遇の悪さにあることは、今一度確認しておきたいところです。全産業平均よりも、年収ベースで100万円以上も安ければ、人手不足は解消しません。
混合介護に反対する人は、介護職の待遇改善についての対案を出すべきでしょう。それがないままに、混合介護を禁止する場合は、今後もますます介護職は不足し、より多くの介護事業者が倒産し、介護難民はむしろ増えていくことになるからです。
※参考文献
・日本経済新聞, 『混合介護拡大 先送り 規制改革会議、与党など慎重意見』, 2017年5月19日
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