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とくに高齢者の場合は、吐いてしまったら、脱水症状に注意しないとなりません。高齢者が脱水症状を起こしやすいという知識がある人は多いと思います。ただ問題は、脱水症状を回避するときの水分補給です。とくに、吐いてからすぐに水分を補給すると、その刺激によって、さらに吐いてしまうことがあり、ダメです。
基本となるのは(1)吐いたものが喉につまらないように、体や顔を横にむけて安静にする(2)吐いてから30分〜1時間くらいは、口をゆすぐ程度にして胃を休める(3)その後、吐き気がおさまってきたら水分(可能なら経口補水液)をとる、という行動です。
水分をとる場合は、胃が1度に吸収できる水分量は200ml程度であることにも注意しましょう。1度に、たくさんの量の水分をとっても、胃への負担が上がるだけです。少量ずつ、回数を分けての補給が大事になります。
ここまでは、脱水症状のリスクを下げるための行動にすぎません。しかし嘔吐は、その背景になにか問題があるときの重要なサインでもあります。ノロのようなウイルス感染はもちろん、他にも、消化器系の病気や心臓病、脳の病気・障害などが疑われるのが普通です。女性の場合は、妊娠も疑われます。
医師による論文(島村・藤田, 2014年)によれば、食事をしてから、どれくらい時間がたってから吐いたのかというのも、重要な情報とのことです。安静が確保できたら、食べたものだけでなく、食べてから何時間経過して吐いたのかについても、記録しておきましょう。常用している薬の情報や既往歴も準備しておくとよいでしょう。
あくまでも可能性の話にすぎませんが、同論文では(1)食べた直後に吐いた→胃機能性障害(2)食後1〜4時間後に吐いた→胃十二指腸疾患や毒素性食中毒(3)食後12〜48時間後に吐いた→小腸閉塞や感染型食中毒、という疑いがもたれることが指摘されています。
食べたものが、そのまま出てきた感じではない場合もあります。黒っぽいものが混じっていたり、血がついていたり、そうしたときは、嘔吐物を保存しておいて、医師に見せる必要があります。紙おむつがある場合は、それに包んでおくと、運びやすいので便利です。
このように、吐いてしまった場合、まずは脱水症状に注意しながらも、背景にある病気を正しく診断するための情報収集が必要になります。後で医師が診断のために必要とする情報を(少しでも多く)把握しておけば、落ち着いて対応することもできるようになります。
繰り返しになりますが、吐いてしまうことの背景には、大きな病気が隠れていることがあります。ただ、なんとなく様子をみているだけでは、後の診断に有効な情報が得られません。素人なりに、可能な範囲で、医師の助けになるような行動を心がけましょう。
※参考文献
・日本医師会, 『高齢者の身体と疾病の特徴』, 地域ケアガイドブック
・おはよう21, 『介護現場の医学知識50』, 中央法規, 2017年2月号
・島村 勇人, 藤田 善幸, 『悪心・嘔吐の見立て/消化器疾患内科の立場から』, レジデント(Vol.7/No.1), 2014年1月号
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