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プロの介護職の待遇が悪いという話はよく聞きます。しかし、そもそも介護事業者が儲かっていないというところについては、いまいち注目が足りないように感じてしまいます。まずは、NHK NEWS WEBの記事(2016年12月30日)より、一部引用します。
ことし倒産した介護関連の事業者は先月末までですでに全国で97件と過去最多となったことがわかり、調査に当たった民間の信用調査会社は「介護報酬の引き下げや深刻な人手不足が影響しているのではないか」と分析しています。
民間の信用調査会社「東京商工リサーチ」によりますと、ことしに入ってから倒産した介護関連の事業者は、先月末までで全国で97件でした。
年間の倒産件数としては去年の76件を上回り、すでに過去最多となったほか、負債の総額も合わせて91億円余りに上っています。倒産した事業者の規模では、従業員が9人以下が全体の86%を占めるなど、比較的、規模の小さな事業者が目立つということです。
特に、小規模な介護事業者が厳しい状態にあります。小規模ということは、基本的に、在宅介護をサポートする介護事業者が多いはずです。施設介護(老人ホーム)の従業員数は、それなりにいるのが普通だからです。
多くの人は、老人ホームに入ることはできません。平均でも月額25万円程度と、入居費が高いからです。そうなると、在宅介護をサポートしてくれる介護事業者が命綱になります。
体力のある大手の介護事業者は、今後も残るでしょう(大手でも怪しいところはありますが)。しかし、在宅介護というのは、介護職(特にヘルパー)が通える範囲内でしか、提供することができないものです。
運良く、自宅の近くに、そうした大手の介護事業者がいればよいでしょう。しかし、大手は、事務所の場所を、できるだけ(お金持ちの)高齢者の住宅が密集しているような場所に、効率的に作っていきます。すると、そこから漏れてしまう人も多数生まれてしまいます。
そのような、大手ではカバーできない空白地帯を埋めているのが、小さな介護事業者なのです。しかし、ここに経営破綻の波が襲ってきています。これによって、在宅介護が回せなくなり、困っている人も増えてきているはずです。
それでも、介護業界の人手不足は、今後もさらに悪化していきます。国の財源も枯渇するため、こうして破綻していく介護事業者が守られることもありません。本当は、お金が流れていかないといけないところが、どんどん締め付けられているのです。
日本は、世界でも高齢化のトップランナーです。高齢化では、日本は、アメリカや中国の、およそ10年先を行っています。ここで一大産業を築けたら、そのノウハウをもって介護を輸出産業として、世界を狙えるのです。
しかし、そうした産業創出という視点からは、特に介護の現場が取り残されています。確かに、ロボットやITは、日本の介護から多くを学び、海外に輸出できるレベルにまで行きそうです。しかし、介護の現場で、要介護者と向き合っているところは、ただ辛くなるばかりです。
介護は、いつかは、誰もが経験することになります。しかしまだ、大多数の人は、介護と関わりのない生活を送っています。そのため、介護と言われても、イメージがつかないのかもしれません。介護=下の世話といった誤解も蔓延してしまっています。
介護を義務教育の中に入れたり、企業の介護研修に補助金をつけたり、まだ、色々な手が打てると思います。より多くの人が、介護と直接関わることになるずっと前から、介護についての認識を深めておくことが大事なはずなのです。
※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『ことし倒産した介護関連事業者 過去最多に』, 2016年12月30日
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