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働く意欲はあるのに、仕事をしていない人(=潜在的労働力)は増え続けていると思われます。この潜在的労働力に関する最新のデータが公開されています。以下、山形新聞の記事(2016年9月30日)より、一部引用します。
厚生労働省は30日、2016年版の労働経済白書を公表した。少子高齢化に伴う労働力人口の減少と人手不足が課題となる中、働く意欲があるのに職に就いてない「潜在的労働力」は635万人に上ると指摘。活用に向け、短時間勤務など柔軟な働き方の導入や、職場情報を分かりやすく提供する仕組みなどが必要だと強調している。
15年平均の完全失業者は222万人いるほか、職探しをしていないなどの理由で失業者として集計されていない就業希望者も413万人に上る。就職に結び付かない理由は「希望する内容の仕事がない」や「勤務時間・賃金が希望に合う仕事がありそうにない」が多い。
こうして、働きたくても、仕事がないという人がいる反面、介護業界では慢性的な人手不足が続いています。「面接に来た人は、ほぼ100%採用になっている」というのは、介護業界では極端な例ではありません。
介護業界では、2025年までに、約38万人の人材不足(見込み215万人に対して253万人が必要)が発生すると言われています。今現在でさえ、人材の充足率(人材需要に対する供給の割合)は、すでに約94%と不足が明白です。2025年には、これが約85%になると考えられています。
このままでいくと、将来は、介護サービスを受ける必要があるのに、近くに、介護サービスを提供してくれる人がいないという状況になります。こうした介護業界の人手不足は、そのまま、自らの介護負担の上昇に直結しているという認識が必要です。
お金のある人は、介護サービスのある地域まで引っ越しをしたり、より高額な保険外サービスを活用するという手もあるでしょう。老人ホームに行けばいいと考えているなら、老人ホームの入居料だけでも見ておくべきです。
老人ホームも、実際は、平均でも月額25万円程度はかかり、一般人には手の出せないものです。現実には、約76%が在宅介護となっており、老人ホーム(施設介護)は、約24%にすぎません(2014年)。この割合も、今後は、人手不足から、さらに在宅介護のほうに寄っていくことになるでしょう。
国の社会福祉のための財源は枯渇しつつあります。このため、介護事業者に対して国から支払われるお金は、どんどん減らされてきています。このため、老人ホームとしても、サービス利用者の自己負担部分を上げていかないと経営破綻してしまいます。老人ホームは、今後はますます富裕層向けのサービスになっていくしかありません。
潜在的労働力とされる635万人のうちの一部でも、介護業界に目を向けてくれたら、状況は変わるかもしれません。しかし、その望みは薄いと言わざるを得ないのです。理由は簡単で、介護は高い専門性が求められる厳しい仕事であるにもかかわらず、報酬が低いからです。
全産業平均よりも年収ベースで100万円以上も安く、毎月の手取りは20万円にも満たないというのが、介護業界の標準的な報酬です。これでは、生活保護でもらえるお金と大差ありません。
こんな状況なのに、2015年4月の法改正では、介護報酬は大幅に引き下げられています。今後の法改正でも、おそらくは、さらに引き下げられることはあっても、上げられる可能性は低いのです。本当に、生活保護のほうが、もらえる金額が多くなるような未来は、すぐそこなのです。
どうしても、介護業界で働く人の報酬を上げないとなりません。これまでも、そうした努力がなかったわけではありませんが、効果は薄いものでした。介護業界で働く介護職を公務員にするなど、抜本的な改革を行わないと、あまりにも悲惨な未来が現実化してしまうのです。
※参考文献
・山形新聞, 『潜在的な働き手635万人 労働白書、勤務制度柔軟に』, 2016年9月30日
・内閣府, 『平成26年版 高齢社会白書(全体版)』
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