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(認知症)要介護者の職業から性格がわかる?気質の4分類について

(認知症)要介護者の職業から性格がわかる?気質の4分類について

「気質(きしつ)」とはなにか?

「気質(きしつ/temperament)」とは、ある集団(人間に限らない)が備えている行動や思考の特徴を表す言葉です。よく「性格」と混同されてしまうのですが「気質」と「性格」は違う概念なので注意してください。

「気質」は、あくまでも、特定の集団に見られる特徴を表す言葉です。これに対して「性格」は、個人によって異なる、よりパーソナルな特徴を表す言葉です。もちろん「性格」は、その個人が過去に所属していた集団の「気質」からの影響を受けます。

たとえば適材適所とは、対象となる個人の「性格」が、対象となる集団(組織)の「気質」と一致していることでしょう。逆に、個人の「性格」が、集団の「気質」に一致していないときは、パフォーマンスも期待できませんし、離職のリスクも高まってしまいます。

個人の「性格」と、集団の「気質」のマッチングに関する困難については、かつて、夏目漱石も頭を悩ませたことでした。講演『道楽と職業』(1911年8月)において、夏目漱石は、多様な職業に対して、学生がそれを選びきれない状態を嘆いています。

逆に言えば、特定の個人が長く居続けることができた集団が持っている「気質」は、その個人の「性格」とマッチしていたと考えられるでしょう。過去には多少のミスマッチがあったとしても、長く居続けることで、その個人の「性格」は、その集団の「気質」に寄せられているはずです。

要介護者(利用者)の「気質」を理解することの重要性

介護の場面においては、要介護者(利用者)の「性格」を把握することが非常に大事になります。そうした「性格」によって、ケアプランの中身も変わってくるからです。しかし、特に情報の少ない介護の序盤や、要介護者に認知症がある場合などは、この「性格」の把握が困難になります。

家族であれば、要介護者の「性格」をよく知っているかというと、そうでもないのが難しいところです。実際に、家庭が見てきた「性格」と、職場で見せてきた「性格」が違うというのはよくあることです。内弁慶(=家庭内でだけ強がり、外では弱々しいこと)という言葉もあるくらいですから、ここは注意が必要でしょう。

では、要介護者が昔働いていた職場の同僚にインタビューできるかというと、なかなか機会も得られなかったりします。すると、非常に重要な要介護者の「性格」の把握は、進まないことになってしまいます。

そうしたとき、唯一の頼りになるのが、要介護者がかつて所属していた集団が持つ「気質」です。具体的には、要介護者が営業部にいたのか、それとも技術部にいたのか、自営業だったのか、職人だったのかといった情報は、要介護者の「性格」を把握する上で欠かせないヒントになるということです。

特に認知症の場合は「性格」の先鋭化(その特徴が強調される)と言われる傾向がみられます。この「性格」を少しでも把握しておくことは、介護のあり方にとって重要であることは言うまでもありません。

「気質」の4分類(組織風土のフレーム)

SPI総合検査は、リクルートが日本ではじめて開発した適性検査として有名です。このSPIは、特に新卒人材の適職診断として利用されることが多く、2015年実績としては11,100社がこれを利用しており、受検者数も181万人に登ります。

SPI(SPI3)は、人材の採用活動において、集団の「気質」と個人の「性格」のマッチングを見るテストです。テスト結果として得られる「組織適応性」という項目においては、4つの「気質」が定義されており、人材がそれぞれどの「気質」にマッチングしやすいのかを理解できます。

この4つの「気質」と、それを判定するための2つの軸について、参考文献(園田, 渡辺, 山田, 2012年)の内容を、KAIGO LAB 編集部が一部改変する形で、以下に図で示します。

「気質」の4分類(組織風土のフレーム)

もちろん、集団ごとに異なる「気質」を、たった4つに分類することには、問題もあります。これだけで正確な判断ができると主張するつもりはありませんが、それでも、参考になるものだと考えています。

4分類を用いた簡単な「性格」の推定例

たとえば、要介護者がバリバリの営業だったとしたら、結果重視の「気質」があるかもしれません。その場合は、責任の所在を明らかにしながら厳しく成果を求めつつ、人のつながりについてはドライといった「性格」が推定されます。

たとえば、要介護者が職人であったなら、秩序重視の「気質」、いわゆる職人気質になるかもしれません。その場合は、手続きやルールへのこだわりが強く、環境の変化を嫌い、誰かと一緒にいるよりは一人でいたいといった「性格」が推定されます。

たとえば、要介護者が大きな会社の研究者であったなら、創造重視の「気質」があるかもしれません。その場合は、他者との意義深い議論を好みつつ、新しいことへのチャレンジにも抵抗がないといった「性格」が推定されます。

たとえば、要介護者が大きな会社の経理担当であったなら、調和重視の「気質」があるかもしれません。その場合は、他者との関わりを大切にしながらも、堅実に物事を進めていくことを好み、チャレンジは苦手といった「性格」が推定されます。

※参考文献
・松本安彦, 『職業研究をめぐって -夏目漱石の空想から』, Business Labor Trend, 2013年2月
・園田 友樹, 渡辺 かおり, 山田 香, 『個人の性格特性と組織風土特徴との適合に関する考察』, 経営行動科学学会年次大会 : 発表論文集 (15), 259-264, 2012年11月17日
・リクルート, 『SPI3とは』

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