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現場を見れば、意義も伝わる。学生が介護業界への就職を考える瞬間について。

現場を見れば、意義も伝わる。学生が介護業界への就職を考える瞬間について。

不足する介護職と、定員割れする専門学校

介護職員は、2025年には、全国で38万人が不足すると言われています。東京における介護職員の有効求人倍率(1人の人材をめぐっていくつのポストがあるか)は4倍近い状態であり、現場には「誰でもいいから、来て欲しい」という声があるほどです。

にもかかわらず、介護福祉士の養成学校は定員割れが続いています。全ての入学枠のうち、埋まっているのは、その半数程度という状況なのです。とにかく、これまでのやり方を続けていては、2025年には、到底間に合いません。なにか、変えていかないとならないのです。

成り行きでは、38万人もの人材が不足するのです。新たに介護が必要になった人の多くは、それをお願いできる人材がいないという状況に陥るでしょう。本当は、人材不足の原因である介護職員の待遇を改善しないとならないのです。

しかし、2015年4月の法改正では、介護報酬は大幅に減額されています。結果として、介護事業者の倒産件数が増え、介護職員の待遇改善は実質的に困難になっています。

もちろん、介護職員の報酬を改善していくことも大事です。同時に、今のような悪い待遇(全産業平均よりも年収ベースで100万円以上安く、手取りが20万円を切る人も多い)でも、介護業界で働くことを決めた人材の特徴についても考えておく必要があります。

介護福祉士を目指す学生の特徴

介護福祉士を目指す学生に関する調査研究があります(天野, 2016年)。この結果からわかる一番大事なことは、将来、介護福祉士になる学生の多くは、養成校に入る前に、介護施設の訪問を経験しているということです。

調査対象となった学校では、入学者の約7割が、中学・高校時代に、学校行事や体験学習といった形式で、介護施設を訪れていました。自主的に訪問したという学生も14%程度いて、非常に積極的な印象を持ちます。

実際に介護職員が働いている現場を見ると、仕事のやりがいや意義は、十分に感じてもらえるということでしょう。これは、2025年の人材不足を乗り越えるのに、大きなヒントになると思います。

だからといって待遇が今のままではいけない

今の介護業界では、スキルや経験が上がっても、待遇はさしてよくなりません。介護業界の現実を見てもらえれば、少なからぬ学生が、介護業界を志してくれるのは嬉しいことです。しかし、後になってその待遇に幻滅し、介護業界を離れてしまうとするなら、とても残念です。

若者は、国の宝です。そうした若者が、手取りにして20万円にも満たないような労働環境で、長期間を過ごしてしまうことは、国の損失にもなります。贅沢をするお金はいらないかもしれませんが、自己投資のためのお金さえも確保できないようなら、問題です。

介護は、産業として日本から世界に輸出できる可能性のある、成長産業です。そこで働く若者に投資をすることは、日本の未来にもつながってきます。なんとか、介護職員の待遇改善を実現していきたいものです。

※参考文献
・厚生労働省, 『2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について』, 平成27年6月24日
・天野 由以, 『介護福祉士を志す学生の現状』, 目白大学総合科学研究12号, 2016年3月

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